古文の世界では、それぞれの月に名前がつけられています。
月の「異名(いみょう)」とも呼ばれ、古文を読み解く上では基礎的な知識になります。

睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生(やよい)・・・というやつね。
テストでも「九月は昔の呼び方で何というでしょう?」とかって問題がよくあるわ。

古文を読むときは基本のキだね。
あと、“艦これ”でも駆逐艦の名前になってたような・・・?
スラスラ出てくるとちょっとカッコいい気もする♪
このページでは、それぞれの月の異名と読み方、そして由来をまとめています。
意味を知ることでイメージを膨らませてもらえたらと思います。
また、記憶を引き出しやすいようにゴロ合わせもつけました。
異名を憶える必要のある人は、ゴロ合わせと意味をセットでマスターすると、記憶に残りやすいと思います。
月の異名と読み方
まずは月の異名を、読み方とともに挙げて行きましょう。
憶えなければならない人は、まず読み方を繰り返して読んで、口をついて出てくるくらいにしてください。
それから漢字を憶えるとよいと思います。
月 | 異名 | 読み方 |
---|---|---|
1月 | 睦月 | むつき |
2月 | 如月 | きさらぎ |
3月 | 弥生 | やよい |
4月 | 卯月 | うづき |
5月 | 皐月 | さつき |
6月 | 水無月 | みなづき |
7月 | 文月 | ふみづき(ふづき) |
8月 | 葉月 | はづき |
9月 | 長月 | ながつき |
10月 | 神無月 | かんなづき(かみなづき) |
11月 | 霜月 | しもつき |
12月 | 師走 | しわす |
月の異名の憶え方〜ゴロ合わせ
一刻も早く憶えたい、そんな時にたよりにしたいのがゴロ合わせ。
ゴロ合わせにはいろいろな種類がありますが、自分にピンと来るものがよいと思います。
いろいろ探した中で私がお勧めするのは、比較的ストーリーが浮かびやすいこちら。
「むきやすい卵をさっき皆で踏みつけたら、鼻かんで失神」
それぞれつき合わせていくと次のようになっています。
む:睦月
き:如月
や:弥生
すい
卵:卯月
を
さっき:五月
皆:水無月
で
踏み:文月
つけたら、
は:葉月
な:長月
かん:神無月
で
し:霜月
っ
し:師走
ん
いかがでしょう?
ご自身でアレンジしてもよいと思いますよ。

・むきやすいたまごを
・さっきふみつけたら
・はなかんでしっしん
の三つに分けると憶えやすいかも知れないわね♪

とりあえずこのフレーズを繰り返して音で憶えよう。
その後で、それぞれの音の部分に月の名前をあてはめるとわかりやすいよ。
月の異名の意味と由来
月の異名をしっかりおぼえるには、意味を理解すると助けになります。
それぞれの異名の由来をみてみましょう。
暦そのものが今とは違っているため、季節の感覚がずれている点には少し注意が必要です。
また、由来には諸説あります。有力なものを最初に挙げていきますが、もし憶えることだけを目的にするのでしたら、自分にピンときたものを憶えても、とりあえずはよいのではないでしょうか。
1月:睦月(むつき)
睦月の「睦」という字は「ぼく」とも読み、「親しくて仲が良い」という意味を持っています。
1月は新年の始まり。親族や親しい人たちが集まって仲良くするというところから「睦び月(むつびつき)」と言われ、これが転じて睦月となったという説が知られています。
また、稲の実を水に浸す時期であることから「実月(むつき)」、一年の最初=元になる月である「もとつき」、が転じた、とする説もあります。
2月:如月(きさらぎ)
寒さのため、着物をさらに重ね着する、すなわち衣更着(きぬさらぎ)、あるいは着更着、などからきたという説があります。ほかには草木が生え始める月という意味で、生更木という説も知られている。
また、中国では二月の異名を如月(じょげつ)と言い、この字があてられたと考えられているようです。
3月:弥生(やよい)
「弥(いや)」の字はいよいよ、ますます、を意味し、「生(おい)」は草木が芽吹く様。
草木がいよいよ萌えだす季節という意味で「木草弥や生ひ月(きくさいやおひづき)」、これが詰まって「やよひ」となったいうのが定説です。
まさに三月をよく表していますね。
4月:卯月(うづき)
卯の花が咲く月ということで、「卯の花月(うのはなづき)」。これを略したものとする説が有力です。
卯の花、と言われてもピンと来ない人もいるかも知れませんね。
ウツギ(空木)とも呼ばれます。茎が中空なので空木という名がつきました。北海道南部から九州まで、日本に広く分布しています。白い花がたくさん咲きますので、きっと見た事はあると思いますよ。
ほかにも、干支の4番目の動物がうさぎだから、あるいは稲を植える植月が転じた、など諸説あります。
5月:五月(さつき)
「早苗月(さなへつき)」が短くなったというのが有力な説。
早苗(さなえ)とは、苗代から田へ植え替える頃の稲の苗のことを指します。
この頃の小さな稲をご覧になったことがあるでしょうか? 小さくてとても可愛らしいものです。また、若々しく可能性に満ちている。このためかつては我が子の名前につける親も少なくありませんでした。
6月:水無月(みなづき)
梅雨が明けて暑さが厳しくなり、水が涸れてなくなる時期を意味する、という説がある一方で全く逆の見方もあります。逆の場合は田に水を入れる月だから水の月。この場合の「な」は現代でいう「の」の役割を果たしていると見るわけです。
さて、どちらが憶えやすいでしょうか。
7月:文月(ふみづき)
七夕には短冊を書きますね。文(ふみ)をしたためる月だから文月となったという説が知られています。
ほかには、書物をさらす風習があったとする説、稲穂がふくらんでなかにお米が含まれるようになる「含み月(ふくみづき)」から来たという説もあります。
8月:葉月(はづき)
木から葉が落ちる月、すなわち「葉落ち月」が転じて「葉月」であるという説、雁が初めて北方から渡って来る頃なので初雁(はつかり)、が転じたという説、稲の穂が育ち、そろそろ張ってくる張り月(はりづき)から来ているという説などがあります。
9月:長月(ながつき)
夜が長くなってくる時期で、夜長月(よながつき)の略だという説があります。
ほかには収穫の時期であることから、稲刈月(いねかりづき)だったものが「ねかづき」、「ながつき」に転じた説が知られています。
10月:神無月(かんなづき)
神をまつる月、すなわち神の月から来ている。
この場合の「無」は、6月の水無月の時と同じく「の」を意味と理解されています。
一方では、全国の神様が出雲(島根県)の出雲大社に集まって話し合いをする、という俗説が知られています。そのため、出雲以外には神様がいなくなる。神がいない月として神無月というわけです。
逆に出雲地方では「神無月」とは言わず、「神在月(かみありづき)」と呼ばれています。
11月:霜月(しもつき)
霜が降りる霜降月(しもふりつき)の略だという説が有力。
ほかには「下」月から来ているという説もあります。
この場合は十月を上(かみ)の月と考えて、11月を下(しも)と考える。
10はひと区切りなので上(かみ)、次の11は下というわけですが、いかがでしょう?
由来の真偽はわかりませんが、関連づけて憶えたい受験生には役立つ場合もあるかも知れないので、いちおうご紹介しておきます。
12月:師走(しわす)
普段は落ち着いている師匠・お坊さんも忙しく馳せてまわる年の末。師馳(しはす)、という説が広まっています。イメージしやすいので憶えやすいでしょう。
年が果てるという意味で「年果つ(としはつ)」、四季が果てる「四極(しはつ)」が転じたという説もあります。
読み方、書き方に注意
学生さんがご覧になっているかも知れませんね。
時折あるひっかけ問題で、例えば「文月が何月か、漢数字で答えなさい」というような場合、答えを7月と書くと×にされるケースがあります。
漢数字で、とあるので「七月」と書いておきましょう。
旧暦は13ヶ月あることも
上で挙げて来た月の異名は、現在とは違う暦のもとで使われていた点に注意が必要です。
ここから先は、興味があったら読んでみてください。
旧暦、という言い方を皆さんもご存知でしょう。
現在の私たちが使っている暦は、太陽の動きをもとに作られています。
しかしこのような太陽暦を日本が採用したのは明治6年のこと。それ以前は「太陰太陽暦」を用いていました。太陰太陽暦は、月の満ち欠けを基本にしつつ、そこに太陽の動きを加味して調整したものです。
太陰太陽暦はいろいろあり、太陽暦の直前に使われていたのは「天保暦」。
旧暦という時はこの天保暦をさす事が多いのですが、古典古文が成立した時代によっては、また違った暦法だった可能性もあるわけです。
このあたりは『天地明察』などを見るとその面白さの雰囲気が伝わってきます。
太陰太陽暦では、月が新月になる日を月の始まりと考えます。
新月というのは月と太陽が重なった状態。月が太陽とともに動いているため、月は見えません。夜は太陽が沈んでいますし、昼は太陽の明るさで見えないのです。この時を月の最初と考え、満ち欠けが一巡したところで次の月に移る。
ですが新月から新月までは約29.5日。12ヶ月では354日ほどになり、太陽暦の一年=365日より短くなります。そのため、年を経るごとに暦と季節がずれていってしまう。
そのため太陰太陽暦では、閏月というものを設けて調整していました。
具体的には三月の次に閏三月を入れ、その年を13ヶ月としたのです。
太陽暦でも閏日が四年に一度ありますが、太陰太陽暦の閏月は、平均すると19年に7回くらいの割合で設けられるそうです。割合からすると3年に一度くらいでしょうか。
このような季節のずれを調整するために、旧暦では二十四節気が設けられていました。
夏至とか当時、春分、秋分というアレですね。一年を細かく二十四分節し、こちらは太陽を基準に決められています。
立春・雨水・啓蟄・春分・清明・穀雨
立夏・小満・芒種・夏至・小暑・大暑
立秋・処暑・白露・秋分・寒露・霜降
立冬・小雪・大雪・冬至・小寒・大寒
月の満ち欠けによって暦の月を数え、太陽の動きによって季節を区切る。太陰太陽暦はハイブリッド・カレンダーと言えるでしょう。
さて、月の異名と季節が問題になる場合、学校では
1月から3月が春
4月から6月が夏
7月から9月が秋
10月から12月が冬
とサックリ説明されています。
閏三月は春なのか、夏なのか?
このあたりの問題をどのように理解すればいいのでしょう。
私も今調べている最中ですが、なかなか面白い広がりがありそう。
旧暦とひと口に言っても深いものです。
こういう点から古典や理科への興味を、学校で教わる以上に広げて行くのもよさそうです。
英語の月の名前についてはこちらをどうぞ。

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