不協和音:欅坂46の4thの歌詞と、僕は嫌だ!が意味するもの

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欅坂46の四番目のシングル『不協和音』が、3月17日深夜、『こち星』で発表されました。
今回はこの『不協和音』の歌詞をチェックして、これまでの曲との関係について考えてみました。


 

『不協和音』というタイトル

『サイレントマジョリティー』での鮮烈デビュー以来、『世界には愛しかない』『二人セゾン』と名曲を連発してきた欅坂46。それだけに、周囲の4thへの期待は最高潮。フレッシュな新人グループとして周囲から見られていたこれまでと違って、すでに紅白歌手ともなった彼女たちの4thには、神曲であって当たり前的なプレッシャーもあったと思います。

そんな中、4thのタイトルが『不協和音』であると知ったとき、小躍りして喜んだのは私だけではないはず。
周囲からの大きな期待とプレッシャーを、欅坂46は真正面から受け止めてる!
『不協和音』というタイトルからはそれがきっちり伝わってきて、嬉しくなりました。

そこそこ売れてメンバーの周知も広まって来た今、よくあるアイドルグループのように可愛らしく収める方向もあるのかも知れません。ですが4thのタイトルは『不協和音』。『サイマジョ』で魅せてくれた挑発的なテイストを、欅坂のアイデンティティとしてしっかりキープしてくれてるんだな、とわかります。

欅坂46『不協和音』
画像出典:欅坂46公式サイトより

『不協和音』の歌詞について

前置きが長くなってしまいました。
歌詞に沿って見ていきましょう。

作詞はこれまで同様、御大・秋元康さんです。(事情により、歌詞の全文は掲載できません。ご覧いただく上で心苦しいですが、文中、かいつまんで箇所を示すにとどめます。ご了承願いたいと思います。)

僕はYesと言わない
〜〜

冒頭から、Yesと言わない、と宣言されています。
この節は、とにかく「うんと言わない」という姿勢が、徹頭徹尾示されている。
最後の一人になっても抵抗し続けるぞ、という宣言です。

叫びを圧し殺す
〜〜

かなり強いプレシャーが、外部からかかっていることが伺えます。
その圧力は仲間うちにも浸食して、ともすれば裏切り、裏切られるという混乱まで生じかねない。

僕は嫌だ!

そんな抑圧的な状況を打ちはらすてちの一喝!

不協和音を僕は恐れたりしない
〜〜

どんな圧力も混乱も恐れない。妥協するよりは嫌われたほうがまし。
なぜなら、同調すれば死んだも同然だから。
・・・かなり激しいです。


画像出典:欅坂46公式サイトより

聴いていて印象的なのは、何と言っても「僕は嫌だ!」。
この後も繰り返し出て来て、合計三回、嫌がってます。
叫んでいるのは、てちとねるでしょうか・・・ちょっと可愛いです(笑)。

聴いてわかるとおり、この「僕は嫌だ」がこの『不協和音』の全体を貫くテーマ。
Yesと言わない、つまり、Noという人間の叫びが描かれている。

ただNoと言うにとどまらず、絶対沈黙しない。
同調を強要するものに対しては獰猛に抵抗する人間。
それによって周囲から白い目で見られても、命をかけて自分の正義を貫こうとするような人間です。

 

不協和音(discord)とは?

冒頭の姿勢は、歌詞全体に一貫して繰り返され、強調されています。
この抵抗の背景にあるのは、「自由」への信頼。

私としては、後のほうで出てくる、

調和だけじゃ危険だ

まさか自由はいけないことか?

このあたりがキモなように感じられました。

最後のdiscordは、そのまま不協和音のことですね。

和音と言えば、調和して美しく聞こえるドミソとかミソラとか、そういうものをイメージしますよね。でもそれは和音の一部。美しく聞こえない不調和な和音もあって、不協和音ってそういうやつ。
協和音を聴くと安定した気持になりますが、不協和音を聴くと不安で陰鬱な印象を受けます。

不協和音、実際に聴いてみましょう。

脱線ですが、不協和音の部分の音符にピンと来た人もいるかも知れません。
そうです、最近の小林由依さんのブログに出てきましたね。

禁止令発動☆彡 | 欅坂46 小林 由依 公式ブログ
「坂道シリーズ」第2弾 欅坂46

不協和音という言葉は、音楽にとどまらずもっと広い意味でも使われます。
人間関係がぎくしゃくした時、組織に不協和音が生じている、などという言い方がなされる。欅坂の『不協和音』はまさにこの意味で使われています。


画像出典:欅坂46公式サイトより

僕は嫌だ! 『サイマジョ』『セカアイ』との関係

こういう“ぎくしゃく”は、周囲の空気に流されず、自分を貫こうとするとどうしても生じてしまうものです。私があらためて言うことでもないでしょうが、これは『サイマジョ』のメッセージに直結している。

誰かの後をついて行っているうちは、その場は調和しているように見える。誰も傷つかない。でもそれは本当の自分を押し殺し、ないがしろにしているだけで、本当の調和ではない。
本当に自分が生きていると感じられる世界を獲得するには、もの言わぬ大衆であることから脱け出して、自らの声を上げなければならない。
でも、声を上げれば傷つくこともある。周囲にも波風が立つ・・・不協和音が生じる。
それでも僕は嫌だって言うよ、ってわけですね。

そもそも、そんな摩擦や傷は、欅坂にとってはすでに折り込み済みだとも言えます。

本当の世界を築くためには夕立もまた良し。むしろそんな風雨の中を走っていくことこそ、私たちのリアリティなんだ、と『世界には愛しかない』で高らかに歌われています。

2ndは、曲調やMVこそ爽やかだけれど、かなりラジカル。なにしろ世界には愛しかないと断言し、そを目指すことが自分たちのアイデンティティなんだ、と明言しています。
『セカアイ』の冒頭はてちの絶叫から始まりますが、あれこそ今回の「僕は嫌だ!」に通じている気がします。
欅坂は戦っている。
彼女たちのコスチュームが一貫してミリタリーなのはダテじゃないんですね、きっと。

『二人セゾン』ではあまりにキラキラした青春の風景に目を奪われました。聴けば聴くほどよい曲ですが、『サイマジョ』や『カタミラ』のイメージに惹かれていたファンはやや肩すかしだったかも知れない。
見た目2ndの『セカアイ』も爽やかなイメージが前面に立っていたので、3rdを聴いた当初は、『サイマジョ』の欅坂はどこ行った?、的な不安もありました。でも今回の『不協和音』は、そんな不安を見事に払拭。『サイレントマジョリティー』『語るなら未来を』に直接繋がる、欅坂らしさ全開の曲。・・・あ、もちろん私が思う限りで、ですが。


画像出典:欅坂46公式サイトより

僕は嫌だ!と言わない人々は?

『不協和音』の歌詞で面白いと思った点がもう一つ。
それは、僕は嫌だ!と叫ぶ対象がどんなものなのか、割と具体的に示されている点です。

一つは外圧的なもの
・それは、叫びを圧し殺す見えない壁
・同調しなければ裏切り者だと言う仲間
・そういかたちで僕を支配しようとするもの

もう一つは、この外圧に敗れた後の姿
・反論することに怯える人生
・ねじ伏せられた怒りを抱えた人間
・目立つことを否定し、調和だけがある世界

見えない同調圧力に抵抗しなければ、プライドを捨てて生きて行かなければならない。
常に怯えながら、それでいて内側に怒りを抱えて生き続けることになる。
目立つことを避け、調和しかないかのように振る舞う世界には、そんな人生が待っている・・・

こりゃ確かに嫌ですな。

とは言え、世の中九割くらいはこれで出来ていたりもします。
だからこそ、欅坂の『不協和音』がまぶしく輝いて見える。


画像出典:欅坂46公式サイトより

おわりに

今回は『不協和音』を“欅坂らしい”曲として書いてきましたが、イメージとしては対極にありそうな『二人セゾン』も私はかなり好きです。一番よく聴いているかも知れない。

以前書いたこともあるんですが、『二人セゾン』にも欅坂のアイデンティティが沈み込んでいるような気が、私にはしています。1stからこの4thまで、曲が発表されるたびにそのどれもが欅坂のメッセージの一貫性を感じさせてくれるような気がして、ますます欅坂46にハマっていっています。

とはいえその一貫性は、人生をこじらせ気味のおじさんが勝手に読み取っているものかも知れませんけどね(笑)。

ここまで、もし最後までお付き合いくださった方がいらっしゃったら、お礼申し上げます。
違和感をお持ちになった方もいらっしゃるでしょう。いちファンの駄文と大目に見てくだされば助かります。

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追記(2017/03/23)

mvが発表されていましたので、貼らせていただきます。

見た感じ、確かにこの『不協和音』、上に書いたような『サイマジョ』路線の継承ではあるものの、さらに過激に武闘集団化している印象。
猛々しいてちにしびれました。アイドルの枠に収まらないカリスマを感じてしまうのは私だけでしょうか?

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コメント

  1. 茶の間オタ より:

    ブログ拝読しました!
    W-KEYAKIZAKAの詩のロケ地の記事からこのページに辿り着いたのですが、
    すごく面白かったです!
    欅ちゃんはメンバーも楽曲も素敵ですね \( ˆoˆ )/
    てっちゃんにカリスマ性を感じます!

  2. webmaster より:

    茶の間オタさん、ご感想をどうもありがとうございます。
    欅ファンの方に楽しんでいただけたら、とても嬉しいです。

    私は箱推しですが、やはり不動のセンターあっての欅坂という気がしますね。
    これからどんどん飛躍していって欲しいです。

    せっかく投稿してくださったのに、気づくのが遅れてしまって申し訳ありませんでした。