「エモい」の意味と使い方

最近よく聞く「エモい」。
意味があるようでいて、実際にはよくわかりません

ノリで使われている場面もあるので、使ってる人自身がはっきりと意味を理解していないケースもありそう。
もちろん聞いてるほうも事情は似たりよったり。
結果として、「知ったかぶり」がさらに「知ったかぶり」を呼ぶ「知ったか連関」でその場がおさまっていることもかなり多い気がします。

というわけで今回はこの「エモい」について、意味使い方を考えてみたいと思います。

 

エモいの構造

「エモい」は英語の名詞「emotionエモーション)」に由来しています。
日本語に訳すと感情・情緒をなどの意味。
「エモい」は、この「エモ」に接尾語の「い」をつけて形容詞化したもの。

エモいの意味

この「エモい」の成り立ちから考えると、意味は、

  • 感情に訴えかける
  • 心を動かされる

あたりをコアにしていると考えられます。

「ヤバい」を例に理解してみる

突然ですがこの「エモい」、ちょっと「ヤバい」に似ている気もします。

ヤバいは、もともとは「危うい」という意味でしたが、危険を感じた際のドキドキ感から転じて、強く心を動かされる様子を表すようになりました。意味の領域がかなり拡大した結果、その指し示す意味の範囲がよくわからなくなってしまった。
嬉しい・楽しいから悲しいまで、今や何でもヤバいになってしまっていますよね。

「エモい」も、元が感情であるだけに、心を動かされる様子を表している。
でも、元が「emotion=感情」なだけに、こちらはヤバいと違って最初から感情全体を示している感じがあります。
「ヤバい」がある程度時間をかけて到達した広〜い意味の領域に、「エモい」は最初から立っている。

この、心に訴えること全般を指す漠然とした感じが、「エモい」の意味をわかりにくくしているのでしょう。
そもそもが、楽しいとか悲しいといった具体的な感情ではなく、感情を刺激された場合一般に使われているというのが現状ではないか、と思います。

ヤバい、との違い

ただし「エモい」のほうは、どこか静かな情緒性を帯びていて、「ヤバい」のような激しさとは少し違う印象もあります。

「えも」というもっさりした音の響きと、「やば」という濁音を含む音の響きのニュアンスの違いに応じて、表す感情にも若干の棲み分けがあるように感じられます。

“しみじみ”くる「あはれ」説

三省堂が選ぶ「今年の新語2016」では、「ほぼほぼ」に次いで「エモい」が二位になりました。
その際の評によると、「エモい」を古語の「あはれ」にさかのぼって理解しようとしています。

学校で習ったような気がしますが、「あはれ」はしみじみとした趣や感情を表す言葉です。現代語の「哀れ」と同じではありませんが、通じるものをもっています。これは同じ美的な概念である「をかし」が、現代語の「面白い」に一脈通じるものを持っているのと似ています。

私自身は、エモいが「あはれ」なら、ヤバいは「をかし」、と考えてもよさそうに思っています。

 

ベースにある「言葉にできない」感と使い方

そういうわけで、私自身はこの「エモい」を、「しみじみ訴えてくる」という感じで使うことが多いです。
「ジワる」などとも少し似ていると感じています。

でも、実際に使われている場面を見ると、もっとずっと多様な使われ方をしていて、とてもこの理解だけでは追いつかないのも事実。

ノリで使われることも多い、と書きましたが、例えば「言葉にできない感情を共有したい」という思いがその場にあるような場合、そのためのサインとして「エモい」が使われるように思います。

「エモいよね〜」
「うん、エモすぎ!」

こんなキャッチボール的なやりとりが定番で、これきりで終わることも多い。でも通じればそれでいい。互いの同意がとりつけられれば、その中身はどうであれ、共感するための符牒として成立したことになります。

逆に

「エモいよね〜」
「そうかな? どのあたりが」

となると、エモいの内実をめぐって議論になります。

「エモいとは何か?」がここで初めて追求されることになるわけですが、多くの場合、これは望まれていない状況かも知れません(・・・私は今まさにこのあたりをほじくっているわけですけれども・笑)。

「エモい」の由来は音楽

今のように広く使われるようになる以前、音楽の世界では早くから「エモい」が使われていました。

詳しいことは専門のサイトをご覧いただきたいのですが、十数年前くらいに、音楽の新しい流れとしてエモーショナル・ロックとかエモーショナル・ハードコアと呼ばれるものが現れた。
メタルやパンクといった激しいものでもなく、聴きやすいメロディラインばかりでもない。両者のいいところをとって、ストレートでありながら感情に訴えてくるemo(エモ)。

ここから、エモい音楽、エモいバンド、などという使い方がされ、「エモい」はその筋で長らく使われて来たようです。だから音楽に詳しい人からすると、今の「エモい」の使われ方は広くなりすぎて、ちょっと違和感があるかも知れません。

 

まとめ〜結局、エモいの意味は?

「エモい」はいまのところ、指し示す意味がはっきりしないまま流通している言葉だと言わざるをえないと思います。

基本は、言葉にできないような感情を表現したい場合に用いる。
この場合の意味をあえて書くとすれば「感情に訴えてくる」です。
その点では「ヤバい」にも似ているのですが、「ヤバい」が驚きと興奮を伴うのに対して、「エモい」は静かにじんわりとくる、という感じがします。

ともあれ、「エモい」の広がりは現在も続いています。
ここでは私の理解の例を書いてきましたが、みなさんも当面の仮の理解を携えながら、また、その場その場で使い&聞きながら、意味を微調整していくのが現実的かも知れません。

みなさんもこの「エモい」をものにしてみてください。

最後までご覧くださり、ありがとうございました。
ご異論、ご意見、参考になりそうな情報などありましたら、お待ちしております。

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