NHKの連ドラ『ひよっこ』が大詰めですね。来週の今ごろはもうみね子たちに会えないと思うと、早くも“ひよロス”気味です。
ストーリー展開よりも、ひとつひとつの何気ないシーンがじわりと胸にしみてくるのが『ひよっこ』の魅力。だからこそ、それぞれのキャラクターが深く自分の中に住み着いてしまっているんですよね・・・まぶたを閉じると印象深いシーンが次々にあふれてきます。
というわけで今回は、朝ドラ『ひよっこ』のなかで、特に印象に残っている感動のシーンを、勝手にランキングしました。私同様、“ひよロス”になりそうなみなさんにご覧いただけたら、と思います。
アイキャッチ画像出典:NHK『ひよっこ』(2017)より
『ひよっこ』感動の名シーン、ランキングBEST5
ですがあくまで私の「個人的」なランキングなので、「え、そこかよ?」ってなるかも知れません。本来ならストーリーの節目節目の場面を挙げるべきところですが、目を閉じて直感的に思い浮かんでくる場面にフォーカスしてます。
ご異論もあるかと思いますが「あ、そんなシーンあったね」と面白がってもらえたらありがたいです。
第5位:雑踏の中に消えて行く三男
いきなりニッチなシーンをあげちゃいます。
集団就職で東京に出て来たみね子たち。学校の先生の引率のもと、上野駅の構内で体育座り。引き取りの人が来るのを待ちます。
初めての東京、親元を離れて明日からは仕事という初めてづくしの中、張りつめるみね子・時子・三男たち。頭ではわかっていても、気持ちはまだ追いついていません。
そんな中、こわもて(この時点では)の米屋の主が登場。
三男の手を引いて、さっさと連れて行ってしまいます。
みね子たちを振り返りながらも、雑踏の中に消えて行く三男。
十分な別れもできないまま三男を目で追うみね子、時子の表情。
この時、子どもたちは自分が投げ込まれた新しい現実を、まざまざと感じたはず。
もう後には戻れない。故郷奥茨城村で過ごして来た世界とは違う時間の流れに巻き込まれている。三男を飲み込んだ上野駅の人の流れが、そのことをよく象徴しているように感じました。
第4位:豊子の乱
みね子たちの勤め先・向島電機が倒産。設備を引き取りにやってきた業者を前に、豊子が工場を封鎖、単身立てこもります。
工員の中でも最も優等生で理性派でもある豊子の反乱に皆が驚き、そして涙したことと思います。
「それでも嫌だって喋りてえ!」
自分を振り返ってみると、仕方がないと諦めて流れに任せてしまっていることって、けっこう多いですよね。
それについてジタバタしても、意味がない。どうせ駄目なんだ。
そんな風に自分を納得させているから、日常が保たれている面もある。
でもその影では、自分の自然な感情が圧し潰されている。
本当は泣きたいし、本当は嫌だって叫びたい。
でもそれをするのは大人じゃない。
こんな具合に感情を押し殺すことに慣れている身にとって、この豊子の叫びは胸の奥底をふるわせるものでした。
第3位:ふかふかのスリッパ
これもとても細かいシーンです。
“生活の格差”や“目に見えない感情”を
スリッパやほつれで表現する。
この脚本、演出。今のドラマではあまりみない…
親が卑屈に成っているのを目の当たりする子供の切なさが痛い。#ひよっこ pic.twitter.com/g1HDdxWWeP— 爆音★Les paul (@BAKUON_LESPAUL) August 3, 2017
保護されている夫・実を迎えに、世津子のマンションを美代子が訪れた場面。
玄関から室内に上がる際に、きれいに揃えられた真新しいスリッパに足を入れる描写がありました。
奥茨城の実家とは全くの別世界。
そこから、記憶を失った夫を連れ戻さなければならない。
相手は日本中に知れ渡る大女優。
そんな美代子の緊張を迎えるやわらかなスリッパ。
でもそれは、美代子の不安を和らげるものではなく、むしろ緊張を高めるものだったに違いありません。
後で村に帰った美代子自身が、“奥茨城母の会”でも報告していましたね。
あの場面でスリッパのアップをもってきたところが『ひよっこ』らしい、とも感じています。
第2位:語らずに語る茂
こっそり見送ろうと思ってた じいちゃんのもくろみは、みね子に めっかって失敗。空気の流れで映像も微妙に揺らぐことから、実際に じいちゃんの立ってる離れた場所から極端にズームアップした映像だとわかる。そのまま、茂じいちゃんの心象表現なんだな。#ひよっこ pic.twitter.com/LoowLQXOOj
— ひぞっこ (@musicapiccolino) April 27, 2017
これは一つのシーンというわけではないのですが、みね子の祖父である茂・古谷一行さんの存在感が濃かった。
セリフも多くは無かったのですが、そこにいるだけで画面に影響がありましたね。
例えばですが、みね子が東京へ旅立つ際、遠くから見送る茂が、かなり長めの望遠で撮られたシーンがあります。
また、戻って来た実が家族との絆を取り戻そうとしている過程で、父である茂に「実って、いい名前ですね」と言う場面がありました。その一瞬の後、古谷さんが表情を崩すシーンに、涙腺をやられました。ほんとうに一瞬のシーンでした。
画像出典:NHK『ひよっこ』(2017)より
いずれも古谷さんは無言、尺も非常に短いのですが、細かな表情の変化が、とっても雄弁に語りかけてきます。ベテラン名優とはこういうものか、と恐れ入りました。
そしてこの無言=雄弁という茂の存在は、私が最も印象に残っている『ひよっこ』のシーンとても密接に関係しています。
第1位:奥茨城村の風景
もし三年たって『ひよっこ』と聞いた時、どのシーンが真っ先に思い浮かぶか?と問われれば、私は間違いなく奥茨城村の、みね子の実家の風景を挙げると思います。
これも特定のどの場面というわけではないんですが、ある時はみね子が自転車で疾走し、ある時は実と美代子が並んで歩いた、その背景。
東京へ旅立つみね子を家族が見送った時、愛子がくれた切符でみね子が帰省した時、美代子が実を連れ戻した時も、みね子の実家の前に広がる田園風景が映し出されていました。
そこはたいせつな家族の場所。ヒロインみね子と家族の、心の故郷。
何も語らないけれども、常に何かを語りかけてくる。茂じいちゃんは、この風景の象徴のような人です。あの景色は単なる自然ではなくて、谷田部の人が脈々と耕して来た時間そのものですから、茂が風景のオーラを背負っているのも当然なのかも知れません。
『ひよっこ』のヒロイン谷田部みね子は特別な存在ではありません。立身出世もしないし、とりわけ艱難辛苦の人生を歩んだわけでもない。でもその人生はキラキラとした宝物にあふれていました。そしてみね子の世界も、その世界にとってみね子も、十分すぎるほど特別な、取り替えのきかない存在であることが描かれました。
あの奥茨城の古びた、どこにでもありそうな民家と田園は、特別ではないものが実はとてもかけがえのないものだということを、あらためて教えてくれた気がしています。
『ひよっこ』感動のシーンランキングまとめ
なんか最後に、いいこと言ってるみたいな流れになっちゃいましたが、けっこうマジメに感動したドラマでした。
最終回までもう少し。目下、猛烈な勢いで伏線が回収されていますので、印象に残るシーンがさらに追加されるかも知れませんが、いまのところのベスト5、挙げてみました。
よかったらみなさんの思い出のシーンも教えてください。
ブログの仕様でメアドを入れることになっていますが、公開はされません。

1964年の東京と農業をテーマに有村架純を撮り下ろし。劇中写真、オフショット+宮本信子さん、佐久間由衣さんとの対談など、って、かなり見たいですね。



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