湯澤剛が借金40億円を返済した方法の二つの本質とは?NHK『逆転人生』

借金40億円が、ある日いきなり我が身に降りかかって来たらどんな気持ちでしょう?
わけわかりませんよね。

そんなある意味貴重な経験をお持ちなのが、湯澤剛ゆざわ つよし)さん。現在、株式会社湯佐和(ゆさわ)を経営なさっている事業家です。40億という金額にも驚きますが、この湯澤剛社長、現在はこの巨額負債を返済しているというから、さらにびっくり!

一体どうやって?

湯澤社長の借金返済方法が気になります。

というわけで今回はこの湯澤剛社長について、調べてみました。

  • 湯澤社長のプロフィール
  • 借金を背負うまでの経歴
  • 借金を返済していった具体的なトピック

などが内容になります。

でも注目して欲しいのは、その中に垣間見える湯澤社長の「学び」。
極限の状況だからこそつかめた哲学は、経営哲学にも生きています。
このあたりについてもなるべく触れたいと思います。

 

キリンビールのエリート社員から一転、借金40億円!

湯澤剛さんのプロフィール

湯澤剛さんは1962年、鎌倉生まれ。
早稲田大学法学部を卒業なさっています。

卒業後はキリンビールに入社。
はじめは国内での営業をしていましたが、その後ニューヨーク駐在となり、医薬事業部門の海外事業を担当しています。

早稲田を出て海外勤務ですから、キリンでもエリートコースだったことが伺えます。湯澤さん本人もこの頃は、サラリーマンを辞めることなど全く考えていなかったそうです。

転機が訪れたのは1999年。お父さんが亡くなり、株式会社・湯佐和を引き継ぐことになります。37歳のときのことでした。
ところがこの会社、有利子負債が40億円もあった。40億というだけでも愕然としますが、利子付きです。放っておけば途方もない額にふくれあがって行くという、魔法のような(呪い?)遺産だったわけです。

この後の経緯は借金挽回のトピックでもありますので、別の項としてご紹介しますね。

湯澤剛さんの現在

現在、湯澤さんは神奈川県内で飲食店を経営。
店舗数は14店舗になるそうです。
また、巨額の負債に打ち勝ったご経験から、「あきらめなければ道は拓ける、朝の来ない夜はない」というテーマで、講演活動も行っていらっしゃいます。

経営学修士であり、認定レジリエンス・トレーニング講師でもあります。
レリジエンス・トレーニングというのは、逆境においても負けないこころを身につけるプログラム。まさに借金地獄から生還した湯澤さんの言葉だと、重みも一層増す気がしますね。

借金克服方法その1・最悪の事態を書いてみた

会社を引き継いだものの、湯澤さんに経営の経験はありません。組織の中で働く分には優秀でも、リーダーとなれば求められるスキルは全く違います。利子の支払いに日々追われる上に、お父さんから引き継いだ数ある居酒屋は、どこもボロボロでした。

完済80年、線路に吸い込まれる?

銀行からは、完済するには80年かかるでしょう、と告げられたと言います。

不安に苛まれるなか、ふと気づくと、湯澤さんは線路に吸い寄せられるような経験をしたと言います。重圧に堪え兼ねて、心が壊れかけていたのでしょう。

ターニングポイントになった対策とは?

湯澤さんには、奥さんもお子さんもいらっしゃいます。それで「これは何とかしなくては」と思った。やったのは、最悪の事態を想定したものを紙に書き出すということ。

これで借金が経るわけではない、言うなればどうということもない策ですよね。
ところがこれは大きな効果があった。
最悪の事態から逃げていると、心のどこかで肥大化していきます。不安から目を背けていると、それはどんどん大きくなる。正面から向き合い、これ以上悪くはならない、というどん底を文字にして書いてみると、その肥大化に歯止めがかかります。

不安を客観的にとらえる

さらに、その不安を客観的に見られるようになる。

文字にしてみると不安は、思っているよりは小さい、という意味のことを、湯澤さんは言います。
「最悪、破産すればいいんだ」と、どん底を見切れたことにより、目の前の課題に集中できるように
なった。
とても小さなことですが、不安と正面から向き合って文字にしたことが、湯澤さんのターニングポイントになった、というわけですね。

このことは、不安を抱える多くの人たちにも役立つ知恵のように思います。

借金克服方法その2・痛恨の失敗から学んだこと

とはいえ、抱えるお店の状況が変わるわけではありません。
初代であるお父さんの代に拡大した店舗網は、管理がほとんどなされていない状況だったと言います。コストカットから始めると、それはもう面白いように節約できたとか。ただし、そんなことでは有利子負債40億には追いつかない。

さんざんな店の状況

店の様子はさんざんで、管理者不在のなか勤務時間中に二階でマージャンをする従業員あり、盗み酒をする者あり、といった風。特にエリートサラリーマンであった湯澤さんにとって、気性の洗い板前さんたちとのコミュニケーションも苦心の種だったようです。

一転突破作戦

そんな中、キリン時代に培った一転突破作戦を湯澤さんは敢行します。
つまり、33店舗あるうち、まずひとつの店舗に力を入れて成功させる。
あとはそれをモデルに、各店舗にその方法を適用、横展開していこうという作戦です。

よさそうですね。さすがです。

ところが、これが大失敗。
何と、かつて野方図に経営していた時より、店の売り上げが下がって行ってしまったと言うのです。
その原因は、戦術ミスにありました。

的外れだった戦術

もともと湯澤さんのお店は中高年の男性が中心でした。
新鮮な刺身のコストパフォーマンスがよかったので、そういう客層のお客さんに支持されていたようです。
そこで湯澤さんは、未開拓の客層を開拓しようとする。
具体的には、女性をとりこもうとしたらしい。

ところがこれが完全に裏目。
女性に受けようとして、おじさんが考えたメニュー・・・聞いただけでも見透かされ、あきれられそうなパターンです。料理に限らず、駄目なパターンですよね。
それだけならまだしも、妙に女性向けのコンセプトを打ち出したため、既存の中高年男性客が遠のいてしまった。
女性客からは「ズレている」といわれ、男性客からは「あの店、変わっちゃったな」と言われる。
そういうわけで、売り上げ全体が減ってしまったわけです。

得られた教訓とは?

湯澤さんはこの時の教訓を振り返っています。
苦しい時には、どうしても弱点にばかり目が言ってしまう。
その時はよくわかっていなくても何か長所があり、それを伸ばすことに注力したほうがいい。

確かに、肩には40億円の利子付き借金があるのです。ダメなところを改善しよう、新しいことをしなくちゃ、という方向に目がいくのは無理もありません。でも湯澤さんの店には、コスパがよい海鮮ものがあり、中高年男性の支持もあった。苦しくても、いや、苦しい時だからこそ長所を見つけて、そこを伸ばして行かなければならない、と言います。

差別化の糧に

今、湯澤さんは三崎港と長井港の競りに参加する権利(買参権)を持っており、そのため安く新鮮な魚を入手できるようになっているそうです。仕入れたその日のうちに提供することもできるため、板前さんも「鮮度では負けない」と自信を見せます。

圧倒的コストパフォーマンスと鮮度。この点は、大量の魚を仕入れなければならない大手の居酒屋チェーンとの差別化にもなっているといいます。失敗を糧に、自らの長所を磨き込んだ結果ですね。

 

株式会社湯佐和

湯澤さんの会社、株式会社湯佐和は、神奈川県の東部を中心に、居酒屋などの飲食店を展開。
オリジナルのブランドには、「七福」「七福水産」「海福」などがあります。
寿司居酒家・回転寿司・焼鳥店・牛丼店 等など18店舗。
本社の所在地は、神奈川県鎌倉市大船1-23-11 松岡大船ビル4F
従業員数は252名(正社員52名・アルバイト200名)

企業理念は、
人が輝き、地域を照らし、幸せの和を拡げます。

  • 地域に必要な店になる!=人の役に立つ!
  • すべてはお客様とスタッフの笑顔と喜びのために!
  • 当たり前のことを当たり前に!

公式サイト →湯佐和

人をたいせつにする企業

前後しますが、湯澤さんの会社は従業員さんをとても重視しているようです。
よい人がいると売り上げはがらりと変わる、と言います。それは、輝いている人がいると、その人の能力以上に、店舗そのものの力が底上げされるのだとか。
そのため湯澤さんは、様々な表彰制度を設けて、社内に笑顔と活気を絶やさないように気遣っています。そして社員数も多い。

驚いたことに、居酒屋のフロアに社員さんが立っている。
これって、大手の居酒屋チェーンではあまりないことじゃないですかね?
この点も、湯澤さんの経営戦略。

めんどうくさいこと、手がかかることをやれるのが、中小の強みだと言います。

効率化して拡大する、そのような大手の路線は、これからの人口減少の社会においてはうまくいかないかも知れない。
そんな風に湯澤さんは考えておられるようです。

輝く社員が幸せに働き、地域にねざした店舗を手堅く磨き上げて行く、そんな方向に、湯澤さんは関心をもっていらっしゃいます。

湯沢剛さんがNHKでとりあげられます。

借金40億円を克服した経営者として、湯澤剛さんがNHKのドキュメンタリーにとりあげられるようです。

タイトルは『逆転人生』。
放送はNHK総合で、10月7日(土)21時00分から21時50分まで。

湯澤さんのおだやかな語り口に、修羅場を乗り越えて来た男の強さと重みを感じてください。

 

おわりに

以上、40億円の有利子負債に見舞われた湯澤剛さんの返済方法を見てきました。
ふれられたのはごく一部ですが、私としてはここに書いた二点がとても大きいような気がしています。

見直すと、まず
不安が肥大化するのを防ぐために、最悪の状況を書いてみる。
これにより、目の前のタスクに集中できるようになります。
次に
自分ならではの長所を発見し、そこに力を集中して行くこと。
弱点を補おうと発想したら、長所も失われてしまった、という教訓でしたね。

両者ともに、自分自身を見つめる、という点が共通しているのが興味深いところです。

とほうもない状況に放り投げられるとつい自分を見失いそうですが、そんな時こそ自分を保つことがたいせつなんですね。そしてそんな時だからこそ見えてくる自分というものも、あるのかも知れません。

最後までご覧くださり、ありがとうございました。

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