「少しずつ」と書こうとして、「あれ、『少しづつ』だっけ?」
とためらったこと、ありませんか?
あるいは逆に、「『づつ』って『ずつ』だっけ?」とか?
「ずつ」あるいは「づつ」は、とてもよく使う表現です。
どちらが正しいのかしっかり理解しておかないと、思わぬところ恥をかくことも。特に、ある世代の方々がヤバい!
というわけでここでは、「ずつ」と「づつ」について
- 正しい使い方や
- 文化庁が定めたルール
- 語源や意味
- 実践的な使い方
などについてまとめました。
気づいたときがチャンスです。
この機会に「ずつ」と「づつ」について理解を深めましょう。
「ずつ」と「づつ」は、どちらが正しい?誤りはどちら?
結論=「ずつ」も「づつ」も、どちらも誤りではない
「ずつ」と「づつ」はどちらも間違いではない。
でも現代では「ずつ」が好ましい。
いきなりですが、これが結論です。
ちょっと曖昧で煮え切らない結論ですが、これには理由があります。
「ずつ」は現代仮名遣い、「づつ」は歴史的仮名遣い
「ずつ」と「づつ」、もともと使われていたのは、実は「づつ」のほう。
上の結論とは逆なんですね。
「歴史的仮名遣い」とも言われますが、昔の文書や手紙などは「づつ」が一般的でした。
これが改められたのは割と最近。
戦後の1946年、「現代仮名遣い」が推奨されるようになったのです。
こういう仮名遣いのルールは文化庁が決めています。
日本語の混乱を防ぐため、お役所が一定の基準を提示しているわけです。
「ずつ」と「づつ」をめぐる文化庁の紆余曲折
ところが「ずつ」と「づつ」を巡っては、決めた後でも議論があった。
なにしろ長らく使われてきた「づつ」には歴史的な重みがあります。
歴史的な価値が高かったり、文化的に貴重な文書にも「づつ」が使われている。
なにより高齢の人たちには「づつ」の方が馴染みがある。
そんな「づつ」を間違いだと決めつけてしまうのは、さすがに無理がある・・・
そんなわけで1986年、再び仮名遣いのルールが一部改訂され、
「ずつ」が本則(正しい使い方)だが、「づつ」も許容する
という形になりました。
以後、もし今風に書くのなら「ずつ」が正解。
でも昔から使われてきた「づつ」も間違いではない。
という形に落ち着いています。
→文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 現代仮名遣い | 本文 第2(表記の慣習による特例)
「ずつ」と「づつ」の使い分け〜使用上の注意
現実の状況を考えると、文化庁の判断は柔軟で現実的。
でもこれが「ずつ」と「づつ」をめぐる私たちの迷い・とまどいの原因にもなっています。
では私たちが実際に「ずつ」「づつ」を使うには、どんな点に注意すればよいのでしょう。
テストでは「づつ」は誤り
まず“本則”は「ずつ」だという点をおさえておきましょう。
「本則」とは、さきほどの文化庁の文書の中で定められているルール。
公的文書や教科書、新聞などの公共性の高い文書での使い方になります。
学校のテストでも「づつ」は×になるそうです。
現代的な仮名遣いでは「ずつ」が基本、これを憶えておきましょう。
「づつ」も間違いではない
ですが一方で「づつ」の使用が認められている点も、頭に入れておく必要があります。
例えば仕事などで、年長の人からあなたに書類がまわってきたとします。
そこに「少しづつ」「一人づつ」などと書いてある・・・これを誤りだと指摘すると、かえってあなたが恥をかくことになりかねません。「づつ」は、間違いではないのです。
「ずつ」と「づつ」を使うときは統一しよう
私がおすすめするのは、「ずつ」を使うにしろ「づつ」を使うにしろ、自分のなかでルールを決めること。
ブレるのが一番かっこわるい気がします。
その上で、他の人が「ずつ」を使っていても「づつ」を使っていても、それには口を出さずに尊重する。
そうすることで、小さな迷いやストレスから解放されると思います。
公的な文書やテスト勉強のアドバイスでは、指摘してあげたほうが親切でしょうけどね。
「ずつ」と「づつ」の意味
「ずつ」あるいは「づつ」は、ある数量を同じ分量割り当てる、という意味です。
また、ある量を決めて、それを繰り返す、という意味でも使われる。
「砂糖を一杯ずつ(づつ)入れる」と言えば、たくさんのカップの中にスプーン一杯ずつ(づつ)の砂糖を加えるという意味にもとれますし、ひとつのカップの中に、砂糖をスプーンで一杯ずつ(づつ)すくって加える、という意味にもとれます。
「ずつ」と「づつ」の語源
こういう意味をよく噛み締めると、「づつ」と書くほうがしっくりくる、という人の感覚もわかるような気がします。
数を数える時、最後に「つ」をつける言い方をしますよね。
ひとつ、ふたつ、みっつ、という具合に「つ」を重ねながら砂糖を加える。
あるいはそれぞれのカップに入れて行く。
この時に「つ」が重ねられる様子を思うと、「ずつ」よりも「づつ」と書くほうが自然かな、という気もしてくる。
実際、この「ひとつ」「ふたつ」の「つ」を重ねたものが「づつ」の語源と考える説もあるそうです。
他方で「ずつ」の由来は、この「づつ」という歴史的仮名遣いを、現代の発音に照らして書き方を決めた。
つまり「づつ」の「音」を文字で表現すると「ずつ」になるから「ずつ」に変えた、いうことらしいです。
おわりに〜「ずつ」と「づつ」をめぐる危うい世代
以上、「ずつ」と「づつ」について、見ていただきました。
ポイントは
- 現代仮名遣いでは「ずつ」が正しい。
- でも「づつ」も使ってよい。
です。
話が戻りますが、こうしてみてくると「ずつ」と「づつ」をめぐっては、危うい世代が存在することがわかります。
戦後から改訂前の期間、「ずつ」が正しくて「づつ」は誤りと教育されてきた人たちがいるわけです。今もそれを信じ込んだままでいたとしても、本人を責めるわけにはいきませんよね。でもこの認識は、今では“誤り”ということになってしまいます。どこかでこの記事がお役に立てたら、と思うのですが・・・それとなくこの記事を紹介していただけたら嬉しいです(^^)
最後までご覧くださり、ありがとうございました。
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