「ご教示ください」と「ご教授ください」は意味がかなり違います。
どちらもよく使う言葉なので、いい加減に使っていると、後から赤面することになるかも。逆にきちんと使い分けていれば、あなたへの信頼度も増すでしょう。
というわけでここでは「ご教示」と「ご教授」の意味の違いに注目。
ビジネスシーンなどでの例文を交えながら、使い分けをわかりやすくご覧いただきます。
余力があれば「ご指導」と「ご指南」についても、軽く知っておくと完璧です。
では始めましょう!
「ご教示」と「ご教授」を間違えて赤恥
・・・などと、偉そうに書いてますが、実はわたし「ご教示」と「ご教授」を区別せずに使っていました。
どちらも「教えてください」くらいの意味だと思ってたんですよね。
でもある時、取引先に向かって「ではご都合のよい日程をご教授ください」と尋ねたところ「そんな大げさなもんじゃないよ」と返されてしまいました。
「やらかしたかな? 汗」と思って調べたのが、この記事というわけです。
わたしの問いかけが間違っていた理由は以下のとおり(今思い返しても冷や汗です)。
「ご教示」と「ご教授」の意味の違い
どちらも「教えてください」の意味だけど?
確かに「ご教示ください」も「ご教授ください」も、「教えてください」という意味です。
ですが、どんなもの・ことを教えてもらうのかが大きく違う。
その違いをシンプルに言うとこう(↓)なります。
「教示」はピンポイントの情報。ちょっとしたやり方や知識などを教えてもらう場合に使います。
一方「教授」は一定のボリュームがある情報。具体的に言うと、専門的な知識やスキルなどを身につけるため、特に“継続的に”教えてもらう場合に使います。
さっきのわたしの失敗例の話に戻すと、日程は完全にピンポイントな情報ですよね。継続的に教えていただくようなものではありません。なので取引先の方は違和感を感じ、暗に諭してくださったのだと思います。
「ご教示」「ご教授」は話し言葉では使わない
しかも「ご教授」は主に書き言葉で使う表現。「ご教示」も同じです。
話し言葉で使うにはそもそも大げさすぎた。
「ご教示」を口頭で丁寧に言いたい場合は、「お聞かせください」、「お尋ねしてもよろしいでしょうか?」、あるいは普通に「教えてくださいますか」が適切だったと(今なら)言えます。
他方「ご教授」ならば、「ご指導をお願いいたします」などが適切でしょう。
私の感覚ですが「ご教示」「ご教授」ともかなり固い表現なので、社内で使うにはよほどの上役に対して使うというイメージです。
「ご教示下さい」の意味
「ご教示」「ご教授」の意味と使い分け、大まかなイメージをつかんでいただけたでしょうか?
ここからは「ご教示」「ご教授」それぞれについてもう少し詳しく、具体例を交えながら理解を深めましょう。
「ご教示下さい」の使用シーンからみたイメージ
まずは「ご教示下さい」について、具体的な使用シーンを見るとこんな感じです。
- クライアントや上司の日程を教えて欲しい
- 届け出などの申請書などの書き方を教えて欲しい
- 具体的な仕事の内容や手順を教えて欲しい
- 取引の状況について確認したい。
いずれも情報を持っている人に対して、その情報を自分に教えてもらいたい場合に使います。
そしてその情報の内容はピンポイントで具体的。メールで返事をもらえば済むようなことが多いイメージです。
「ご教示」の例と間違い例文
いくつか具体的な例を挙げていきます。○は正しくて、×はちょっとズレている。
○明日の日程をご教示ください。
×来週の予定をご教授下さい。
○現在の在庫の状況をご教示ください。
×仕入れの状況をご教授ください。
○申請書の書き方をご教示くださいますか?
×届け出に必要な書類をご教授くださいますか?
○利用の手順をご教示くださり、感謝しております。
×マニュアルをご教授いただけますと幸いです。
「ご教授」の意味を知ると、○と×、そのニュアンスの違いがよりはっきりしてくると思います。
「ご教授ください」の意味
「ご教示下さい」の使用シーンからみたイメージ
単純な情報や比較的簡単な方法を尋ねる「ご教示」に対して、「ご教授」はもっと長いスパンで、継続して教えてもらう場合に使うイメージ。
そもそも「教授」と言えば大学の先生を指しますよね。先生から教わるものは、何度も通い続けて教えを乞うた上ではじめて身に付くもの。明日の日程や申請書の書き方ではありません。
「専門知識やスキルを身につけるつもりなので、これからしばらくの間よろしくご指導下さい」、こんなニュアンスをこめて使うのが「ご教授」です。
「ご教授」の例と間違い例文
○長年にわたりご教授くださり、ありがとうございました。
×三年間にわたるご教示、ありがとうございました。
○仕事の学び方をご教授いただいたおかげです。
×先輩のご経験をご教示いただいたおかげです。
○成功を導いたノウハウを、ぜひご教授くださいませんか?
×御社のノウハウをご教示ください。
一旦まとめますね。
目上の方に対して何かをワンポイントで教えて欲しい時は、「ご教示ください」と思っておけばたいていは大丈夫だと思います。その人から本腰を入れて何かまとまったことを学びたい・吸収したい場合は「ご教授」を使いましょう。
「ご享受下さい」は誤り
これは余談ですが「きょうじゅ」と打つと「享受」と変換される場合があります。
これを「ご教授」のかわりに「ご享受」と使ってしまうと完全な誤りになるので、注意しましょう。
「享受する」の意味は、与えられたもの・そこにあるものを受け入れ、楽しむことです。
「インターネットを享受する」などと使いますが、これは「インターネットがあることをありがたく受入れ、その機能を存分に楽しく利用する」といった意味合いになります。
仮に「インターネットを教授する」の意味と比べると、こちらは「インターネットというものについて、あれこれと教える」という意味になります。
違いは明らかですよね。
また、「享受する」では「私」は受入れる側。「教授する」では「私」は教える側・働きかける側になります。この意味でも話がおかしなことになってしまいます。
「教示」と「教授」を英語で言うと?
ビジネスシーンでは英語でやりとりをする場合もあるかも知れません。
ネットを見ると「教示する」はtell、「教授する」はteachと同じという情報があります。
確かにここまで見てきた限りではそういう対応になるのかも知れません。ただしこれを実際に「Please tell me .」と使うとなると、ちょっと違和感があります。
teachについても、もっぱら勉強がメイン。ご教示いただくの内容幅を考えると、ズレているケースもあるかと思います。
おそらく英語で尋ねたりお願いする場合は、どちらも
Would you let me know.
か
Would you let us know.
がしっくりくるように思います。
「ご指導」と「ご指南」も便利に使える!
さて、「教えてください」を丁寧に言い換える表現として、「ご指導ください」「ご指南ください」という言い方もありますよね。これらについても、軽くご紹介しておきます。
ここまで読み進めてくださった方なら、「ご指導」「ご指南」とも「ご教授」に近い表現だと感じられると思います。わたし自身、「ご教授」のかわりに「ご指導」を使うケースが多いです。
「ご指導ください」は「ご教授ください」と同じく、ある程度のまとまりをもった教えを乞う場合に使います。「指す」が入っていますので、明確な達成目標があればピッタリですが、それ意外でも大丈夫。「ご教授」ではかしこまり過ぎという場合に幅広く使えます。
一方「ご指南ください」は、武術・芸能に特化した指導、というニュアンス。
例えばゴルフや囲碁を教えてもらう時などは「ご指導」より「ご指南」のほうがしっくりきます。
ご教示とご教授の違い・使い分けのまとめ
「ご教示」「ご教授」のどちらも、日常的に目にする言葉です。
なので何となく真似をして使いがちですが、見ていただいたとおり割とはっきりした意味の違いがあります。
どちらも「教えてください」の意味ですが、
- 「ご教示」はワンポイントの情報
- 「ご教授」は継続的な指導
を中心にして使い分けます。
ちょっと意識するだけで、正しい使い方とズレた使い方の違いがわかってきます。
ご自身のビジネスメールもキリっとしまってきますので、ぜひ注意してみてください。
この記事があなたのお役に立てば、私の失敗も少し救われる気がします・笑
最後までご覧くださり、ありがとうございました。
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