プロローグ(Uru)の歌詞の意味、切なく滲む三つの光とは〜『中学聖日記』主題歌

プロローグ』、Uruさんの歌声とせつない歌詞が、聴くたびにしみてきます。
主題歌になっているドラマ『中学聖日記』の内容ともあいまって、忘れられない一曲になりそう。

ヘビロテしている人も多いと思いますが、繰り返し歌詞を聞いていると謎めいた部分もけっこうあります。こんな時って、歌詞の世界に深くひたるチャンスだったりするんですよね。

というわけで以下、『プロローグ』の歌詞の意味を読み解いていました。

タイトルの『プロローグ』とは、いったい何の始まりを意味しているのか?
「滲んだ太陽」など、歌詞で描かれている三種類の光を読み解きながら、この問いを考えます。

と言っても自分は一般リスナーにすぎませんので、これが正解ということではありません。あくまでUruさんの『プロローグ』の読み解き方のひとつとして、楽しんでいただけたら幸いです。

 

プロローグの意味は「始まり」

プロローグという言葉そのものは、小説や演劇などの序章・序幕を意味しています。
これが転じて、一連の展開の「始まり」を指す場合にも広く使われていますよね。

Uruさんの歌詞の中にも

隠せない「始まり」を
次から次へ手の平に伝えていくよ
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

という箇所があります。
ここから、『プロローグ』は、直接的には“二人の関係の始まり”を指していることがわかります。

でもこの曲では、「始まってハッピー、よかったね!」というわけにはいかない。そこがせつないところで、このあたりの意味をなるべく細かく救ってみたいと思うのです。

 

『プロローグ』の歌詞の意味

歌詞そのものをまるっと書くことができないので、パートを示す形で書かせていただきます。読みにくいと思うのですが、大人の事情というやつがありまして、たいへん申し訳ありません。歌詞を知りたい方はすみません、専門サイトをご参照ください。

壊れやすい繊細さ

最初から順を追って読み解いていきます。

目にかかる髪の毛と
かきわけた指
壊れそうでどこか
寂し気な背中
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

目にかかるほど伸びた髪の毛をかき分ける指
大きなわりに華奢な背中は、どこか寂しげ

冒頭のパートは、主人公から見た相手の描写です。

人からの視線を避け、自分の視線も隠したい。
長い前髪は、そんな繊細なキャラクターを連想させます。
かき分ける指はきっと細く長く、ちょっと骨っぽい。

背は高いのに、それに見合う肉がなくアンバランス。
そのためスカスカで、寂しそうにも見える。

ドラマに寄せてしまえば思春期の少年を強く思わせる描写。
でもドラマ抜きにしても、この『プロローグ』の「あなた」はとても繊細な存在であることが伝わってきます。

『プロローグ』の謎〜滲んだ太陽とは?

頼りない太陽を
滲ませながら
微笑んだ その横顔
見つめていた
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

そんな彼の横顔を私は見つめているわけですが、このパートで二つの謎が出てきます。

まず「太陽を滲ませる」という状態がピンとこない。

もうひとつは、ちょっとめんどくさいのですが、太陽を滲ませているのは彼なのか、私なのか?

A.太陽を滲ませながら微笑んでいるあなた。その横顔を私が見つめていた。
B.太陽を滲ませながら私は、微笑んだあなたの横顔を見つめていた。

“太陽を滲ませる”という意味がよくわからないため、どちらに理解したらいいのか、すぐにはわかりません。

先にヒントがあるかもしれないので、いまは無理に解決してしまわずに先にいきます。

視界に入ってきたものは何か?

いつの間にかその全て
視界に入ってくるの
心が波打つ痛みに
どうして気づいてしまったの

自分でも知らないうちに、「全て」が視界に入ってくる(=見えてくる)ようになっていた。

「その全て」とは、「あなた」の一挙手一投足と考えてもよいのかもしれません。
ただ私は、ヒロインの胸のなかで育ってしまった彼への思い、だと考えたいと思います。
胸の奥を波立たせる痛みに、ヒロインは気づいてしまった。だから彼が視界に入るたびに、その思いに苛まれる。
気づかなければよかったのに・・・でもそれはもう、見えないふりはできないほどに大きくなってしまっています。

知られてはいけない感情

あなたを探してる
隠した瞳の奥で
誰にも見えぬように
行き場もなくて彷徨いながら
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

主人公は「あなた」を探し求めています。
だけど彼女自身まだ、自分の胸に宿ったこの思いに、戸惑っている。
そのため本当の心を視線の奥に隠しながら、誰にも知られないように、彷徨う。どうしたらいいかもわからないままで。

夢の記憶と淡い星

あなたと見る世界は
いつでも綺麗だった
空には一つだけ
淡く光る 小さな星が
残ってる
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

最初「綺麗だった」と過去形になっていますから、ここは過去の回想でしょう。
一方、後半は「残ってる」と、現在の描写になっています。

二人で過ごした時間は純粋に輝いていた。
ヒロインは今、その輝きを、淡く光る星に託して思い出している。

あとでご説明しますが、二人の思いを育んだ世界は夜だったのかな、と私は思っています。
世をしのぶ幸福を人知れずまもってくれるのは夜の暗闇。白昼堂々というわけにはいきません。

ドラマに寄せても、二人が近づくのはほぼ夜ときまっています。
日中は学校で教師と生徒という役割を演じなければなりませんからね。

でも夜というものは、いつか明けていきます。
綺麗な星々の輝きは、やがて昼の光にのみ込まれ、弱々しくなっていく。
今にも消え入りそうな「淡く光る小さな星」は、二人の幸福な時間の名残り。
目覚めれは消えていく、うっすらとした夢の記憶のような。

まっすぐな眼差しへの戸惑い

求めては突き放す
読めない心
見つめられる程に
嘘がつけない
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

ある時は強引すぎるほどまっすぐに求めてくる。そうかと思えば拒絶される。
“あなた”の心は読めません。

これもドラマに寄せて考えると、半分子どもで半分大人の罪のない純真に、ヒロインは振り回されっぱなし。
でも彼の視線はあまりにまっすぐで、嘘をつくことはできない。
とりつくろったり、適当にごまかして自分を護ることはできません。
こちらも純粋な、まる裸の心でこたえるしかありません。

『プロローグ』の象徴世界

力なく点滅する
あの街灯を
見上げてた その横顔は
優しかった
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

明滅する街灯を見上げていたあなたの横顔は、優しかった。
ここは、幸福だった時間の回想です。


*画像出典 TBS『中学聖日記』第四話より

特に何のことはなさそうな情景描写なんですが、この部分に『プロローグ』を読み解く鍵がありそう。

さきほど書いた、二人の幸福な時間は夜に象徴されている、と感じたのもこのパート。でも思い当たることをひとつひとつ書くとかえってわかりくそうなので、「光」と「時間」というポイントで整理してみます。

ここまで読んできたなかには三種類の「光」と「時間」が出てきました。

  • 頼りない太陽
  • 空にひとつ残る淡い星
  • 力なく点滅する街灯

登場順に並べると上のようになります。

で、それぞれを具体的な時間帯でいうと、

  • 最初のは太陽ですから昼。
  • 次は空に「残っている」ので朝。
  • 街灯は夜。

で、これを二人の時間と照らして見ると、
・街灯(夜)は、二人の幸福な記憶・回想なので過去。
・淡い星(朝)は、空に残っているのを見ているので、現在。
・太陽(昼)は、星を飲み込んでいく未来の暗示。
となりそうです。

頼りない太陽を滲ませた

幸福な夜を経た二人の上に、日の光がさしはじめた朝、

純粋な輝きを放つ星は夢のように儚く、明るくなる空に溶けていこうとしている。
私はその光を見失わないように、目を細めた。

冒頭の疑問「頼りない太陽を滲ませた」とは、目を細めたということかなと、私は考えました。

朝日のまぶしさを弱め、少しでも星の輝きを見ていたい、というヒロインの思い。
その隣には、いつもあなたの横顔がある。

ですから、冒頭の謎、
A.太陽を滲ませながら微笑んでいるあなた。その横顔を私が見つめていた。
B.太陽を滲ませながら私は、微笑んだあなたの横顔を見つめていた。

これはBだと私は理解しました。

プロローグが意味するもの

こうしてみてくると『プロローグ』は、二人の関係の始まりであるとともに、その輝きをのみこもうとする昼の世界との葛藤の始まりでもある、という気がしてきます。

明けたばかりの時間帯ならともかく、日が高くなるにつれ、星を見続けることは難しくなります。
ずっと目を離さないようにしていれば、かなり日が高い時間帯でもごく小さな光を見つけることができますが、けっこう集中力は必要。
でも、それにも限界があり、そこから先は心の中の灯火としてキープするしかありません。二人をとりまく未来は、決して楽ではない。

『プロローグ』もう一つの灯火

熱を帯びた衝動

けれど二人にはもう一つの灯火があります。
ここまで出てきた光はどれも頼りなく、力なく、淡いものでした。

でもここから、歌詞は趣を変えていきます。

破れそうに膨らんで
真赤に熟れた果実は
誰かの摘む手を待っている
ねえ、それは 私だった
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

はちきれんばかりに膨らみ、赤々と熟した果実・・・ここまでの透明な世界とは異質なイメージが提示されます。

私の感じ方なのかもしれませんが、これらの言葉からは生命や性・エロスといったワードが連想されます。熱のない星の輝きとは違う・・・ちょっと表現がアレなんですが、愛や恋だけでは言い表しきれない生命の情動みたいな、熱いものです。

少年自身ではどうしようもない、内側からの衝動。
それを誰かが受け止めなければならない。

その誰かが、ほかならぬ自分自身だったことにヒロインは気づき、心をざわつかせる。

溢れ出した“始まり”

あなたが溢れて行く
抑えた胸の数だけ
隠せない「始まり」を
次から次へ手の平に伝えていくよ
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

あふれ出るあなたの衝動は、わたしの中にも衝動となって溢れる。
抑えていた分、それは内側から殻を割ってこぼれ出る。
私たちは“始まって”しまった。
もう隠すことはできない。

その始まりは熱であり、温度。手のひらから手のひらへと、間断なく伝わっていきます。


*画像出典 TBS『中学聖日記』第四話より

寒風と手の温もり

風は冷たいのに
染まった心は赤いままで
あなたに触れたいと思ってしまった
どうして二人出会ったの
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

外の世界は、二人にとって冷たい逆風です。
風が冷たければ冷たいほど、触れた手のひらの温かさが際立ちます。

あなたと触れたいと思ってしまった。

「どうして二人出会ったの」とは、こうなる結末を、運命として受け入れた言葉なんでしょう。

痛くて苦しくて
それなら見えないように
どこかへ飛んでいけ
そう思うのに
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

ここは意味的には「どうして出会ってしまったの?」の言い換えだと感じます。
直前のフレーズを繰り返して、悲劇的な感情を歌い上げている。
内容的に新しいものはなさそう。

星を浮かべて

あなたを探してる
何度も名前を呼んで
空には一つだけ
淡く光る 小さな星を
浮かべて
*『プロローグ』(作詞:Uru)より

ですがこの最後の部分には、新しい内容が加わっています。

あなたを探している

これは前のほうでも登場した言葉。
でもさっきは「隠した瞳の奥で」探していました。
思いは隠されていた。

でも今回は「名前を呼んで」探している。
声に出して、しかも何度も、繰り返し。

もちろん実際に叫んで探し回っているわけではないでしょう。でも、もう隠してはいないんですね。自分自身にも他の人にも。
そしてこの時の私には、淡く光る夜明けの星がある。

「浮かべて」とあるので、それは実際に空に星ではなく、自分自身でイメージしているんだろうと思います。
つまり、太陽が高く上がった昼の世界で、あなたへの思いを表す時は、心の灯火を自分自身で思い「浮かべて」いくよりない。「始まって」しまった二人には、こういう世界が待っています。

 

おわりに

長くなってしまいました。

自分が気づいたポイントをざっくりまとめますと、次のようになります。

プロローグは、二人の関係の始まりと同時に、それを受け入れた二人を待つ運命の始まり。
昼の世界は、必ずしも二人に優しくありません。

待ち受けるそんな運命を支えるのは、儚いけれど純粋な輝きの記憶。そしてお互いの温度。

『プロローグ』を繰り返し聴いて私がたどりついた歌詞の理解はこんな感じです。

好き放題なことを書いてしまいましたので、Uruさんファン&『中学聖日記』ファンにはご不快な点があったかも知れません。私自身もファンの一人として、なるべく作品の繊細な世界を壊さないように心がけましたが、至らない点があったらお詫びいたします。
一方、もしここまでご覧いただけたとしたらたいへん嬉しく思います。
どうもありがとうございました。