『黒い羊』歌詞の意味と解釈(欅坂46・8thシングル)

欅坂46『黒い羊』ロゴ 欅坂46

欅坂46の8thシングル『黒い羊』が公開されました.

白い群れの中で悪目立ちする黒い羊

このタイトルからして「欅ファンの胸の奥を鷲づかみ」という感じです。

歌詞のほうはどうなるのかな、と楽しみにしていましたが、これも期待通り。
これまで紡いできた “欅坂ストーリー” を、しっかりと歌い継ぐ内容になっています。

というわけでここでは、欅坂46の8th『黒い羊』の歌詞の意味を、私なりに読み解いてみたいと思います。
その中で、曲に漂う疎外感の奥に横たわる希望、みたいなものを救いとれたら、と思います。

*あくまで一人のケヤヲタの感想・見方にすぎません。これが正解、というわけではもちろんありません。みなさんそれぞれの『黒い羊』の世界を大切になさった上で、こんな見方もあるのか、的に楽しんでもらえたらと思います。

*文中の引用は、注釈がない場合、全て欅坂46『黒い羊』(作詞:秋元康)です。

 

『黒い羊』の歌詞が描く世界

商店街の雑踏の中の疎外感

『黒い羊』の歌詞に注目して聞いていると、まず浮かんでくるのが商店街の雑踏。

曲の前後にも効果音が挿入されていて、無名の人々の足音とかざわめきが、それとなく感じられます。

そんななか、主人公である「僕」は、苛立ちに似た気持ちを抱えながら、そのやり場もないまま歩いている。
その歩みはおそらく、人々の流れに従っているわけではなく、ランダムに往きかう人の間を漂っている、という感じでしょうか。時に肩や腕が軽くぶつかったりもしているかも知れません。

 

放課後の教室での同調圧力

もうひとつのイメージは、放課後の教室。
クラスメイトが残って何かの話し合いをしている。こちらはランダムなおしゃべりというよりは、何か決め事をしているような感じです。文化祭の出し物とか、そんな類のことかも知れません。

で、その場にはすでに暗黙の結論がある。クラスの中心のキャラと取り巻きが示す方向があって、そこに「考えるのも面倒だ」的な“サイレントマジョリティー”が同調。さっさと結論出そうぜ、帰ってゲームしたいんだ、みたな空気を醸しています。

だけど「僕」はそんな決め方でいいのか、みたいな違和感もあって、その結果、流れを遮るKY存在になっている。
なりたくてなっているわけじゃないんだけど、一身に同調圧力を受ける存在になってしまっています。

ま、しんどい状況ですね。

僕がいなくなれば、たぶん止まってる時間が動き出す
それでみんな納得したことにしたいんだろう?

みたいに感じている。

黒い羊である理由

商店街の雑踏と放課後のクラス。
どちらにも共通しているのは、「集団のなかで疎外されている僕」というイメージ。

大多数のマジョリティーに対する少数者には、まず同調圧力がかかります。
応じなければ、異物として締め出され、孤立していく。

一方、「僕」の胸中には譲れない “何か” があり、それが安易な同調を許さない。
その “何か” は自分でも制御できない衝動のようなものです。

「同調すれば楽になるんだろう」
「周囲の調和も保たれる」

と頭でわかっていても、そうできない。
なぜなら、そうすればもっと嫌な思いをすることがわかっているから。

白い羊なんて僕は絶対 なりたくないんだ
そうなった瞬間に僕は僕じゃなくなってしまうよ

歌詞で言えばこの箇所ですね。
同調すると、僕という存在そのものが無くなってしまう、そんな風に僕は感じている。

というわけで、同調圧力の中で自分を保とうとする「僕」の中には矛盾が渦巻き、その結果

全員が納得するそんな答えなんかあるものか

僕だけならいっそ無視すればいいんだ

目配せしてる仲間には僕は厄介者でしかない

納得なんかしないまま その度に何度も唾を吐いて噛みついちゃいけませんか?

というような心情が荒ぶります。

これらのフレーズだけみると、どれもかなりネガティブな感情ですよね。

『黒い羊』の歌詞の意味の奥底

『黒い羊』と『エキセントリック』の違い

このような、疎外された魂がたどり着く感情は、かつての欅坂46の名曲『エキセントリック』の歌詞にも刻まれています。黒い羊はエキセントリック(変わり者)の言い換えであるとも言えそうな気がします。

いまここで『エキセントリック』と『黒い羊』の違いを探してみると、歌詞の最後のほう

自らの真実を捨て
白い羊のふりをする者よ
黒い羊を見つけ指をさして笑うのか?
それなら僕はいつだって
それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう

という箇所が目にとまります。

『エキセントリック』では

普通なんかごめんだ 僕は僕でいさせてくれ
理解されない方が よっぽど楽だと思ったんだ

*引用:欅坂46『エキセントリック』作詞:秋元康 より

と、『黒い羊』と同じような立場が描かれつつも

愛なんて縁を切る
自由なんてそんなもの

*引用:欅坂46『エキセントリック』作詞:秋元康 より

と、愛や自由といった根本的にたいせつな理念を否定する言葉が入っています。
エキセンの主人公が本気でそう思っているのか、はたまた拗ねたポーズなのかはわかりませんが、とにかく愛と自由を否定するまで病んでいる。

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一方、黒い羊のさきほどの箇所では、「マジョリティーの中にも、自分と同じものがある」という確信が記されています。

自らの真実を捨て
白い羊のふりをする者よ

お前たちもきっと、白い羊の「ふり」をしているだけなんだろう?
と、見透かしている。

『黒い羊』と『サイレントマジョリティー』

さらに続く箇所では

それなら僕はいつだって
それでも僕はいつだって
ここで悪目立ちしてよう

と謳われています。

ここで「それなら」と受けているのはなぜなのか?

私が思うにその理由は、

白い羊のふりをしている君たちが、自分の中の黒い羊に目覚めるまで、僕はここでずっと笑われているよ。

ということなのでは?と感じています。

孤立を受け止めながら白い羊の導きになろう、という決意。
これは「変わり者のままでいい」として、絶望と諦念の中に自ら埋もれようとする『エキセントリック』とは決定的に違っています。

むしろこの態度は、欅坂46の原点『サイレントマジョリティー』のテーマ
「自分の心の声を押し殺していていいのか」
というポジティブなメッセージにもつながるような気がします。

『黒い羊』の全編を象徴する「全部、僕のせいだ」

とはいえ、『黒い羊』の全編から漂うのはやはり疎外感。
それは曲の中盤に挿入された平手友梨奈さんの、絞り出すような

「全部、僕のせいだ」

に象徴されています。

楽曲の公開に先立って、複数のメンバーから「胸を締め付けられるような」曲という感想が告げられていました。
平手さんのこのパートはまさにそんな感じで、震えました。

この記事ではあえて『黒い羊』の奥底に置かれている希望に焦点をあてて読み解きましたが、みなさんはどんな風にお感じになっているでしょう。

薄暗い部屋の灯りを点けるタイミング

最後に、もうひとつ気になっているフレーズを書き留めます。

それは

薄暗い部屋の灯りを点けるタイミング

という箇所。

いったい いつなんだろう?

と問いかけられています。

ここをどう読むか、いまひとつまだピンとこない。

薄暗い灯りのもとでは、白と黒との見分けがつきにくいですよね。
灯りをつける=白黒を分ける
ということなので、白い羊と黒い羊が生まれる瞬間、ということだろうと思います。

いったいいつの間に、みんな白い羊になっていたんだ?
と、黒い羊になっていることに気づいた戸惑いが描かれているのでしょうか?

いまのところまだスッキリしていないのですが、また理解が進んだら書き加えられるかも知れません。
みなさんの理解もうかがってみたいです。

 

おわりに

現在、私は曲のみを聴いた状態でこれを書いています。

欅坂46の場合は、ダンスやMVで鮮やかなメッセージを付け加えてくることがあります。
時にそれによって最初の印象・解釈がひっくり返される場合もあるので、油断できないのですが(笑い)、以上『黒い羊』の歌詞の最初の印象でした。

最後までご覧くださり、ありがとうございます。

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