御社と貴社、似た表現ですが、どのように使い分けたらよいでしょう?
また、意味の違いはあるのでしょうか?
エントリーシートや履歴書の記入、就活やバイトの面接でこの使い分けがきちんとできていると「しっかりしているな」と好印象を与えることができます。でも知らないまま適当に使ったり、放置しておくと知らないところでマイナス評価を受けてしまうかも知れません。
疑問をもった今がチャンス。
社会人の一人として、御社と貴社の違いを、今ここでしっかりと確認しておきましょう。
本文では、
- 御社と貴社とを使い分ける明確なポイント
- 具体的な例文
- 御社と貴社との意味の違い
や、
- 間違ってしまった時にどうするか?
- 相手が会社以外の時(役所や病院など)どう呼ぶのか?
- 自分のことはどう表すのか?
など、わかりやすく解説していきます。
きちんと理解して、堂々と就活や面接にのぞんでください。
御社と貴社の正しい使い方
御社と貴社を使い分けるたった一つのポイント
「御社」と「貴社」の使いわけ方はとても簡単。
「御社」は話すときに使う。
「貴社」は書くときに使う。
シンプルですよね。
就活の面接などで相手とじかに話す時は「御社」。電話で会話するときも「御社」になります。
一方、エントリーシートや履歴書・メールなど、文字を使ってコミュニケーションする場合は「貴社」を使います。
面と向かって話をするときは常に「御社」を使えばOK。
ただ面接の時には緊張しているので、言い慣れていないとなかなか「御社」と出てこないかも知れません。自然に言えるよう、あらかじめ練習しておくのがオススメです。
「御社」「貴社」は、就職した後も日常的に使うことになります。きちんと身につけておきましょう。
御社、貴社を使った例文
簡単な例文を載せておきます。
「御社」を使った言い方の例
「よろしければ明日、御社にお伺いします。」
「御社のご要望にお応えすることができず申し訳ありません。」
「御社の先進性に魅力を感じ、志望いたしました。」
「貴社」を使ったメールの例文
・貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
・貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
・現職で培った経験を生かし、貴社の営業活動に貢献したいと存じます。
御社と貴社の意味
「御社」と「貴社」に意味の違いはある?
御社も貴社も意味は同じ。
両方とも「あなたの会社」を意味します。
相手を敬う気持ちを表現するため、その人が所属している会社を指すときに用います。
厳密に言えば、「御」と「貴」という漢字そのものがもっている意味がありますので、微妙なニュアンスの違いはあるでしょう。ですが就職活動やビジネスシーンでは、上でご紹介したとおり使用する場面で使い分ければ大丈夫です。
御社と貴社とを使い分ける理由
意味が同じならば、なぜ使い分けるのでしょう?
「御社」がひろく使われるようになったのは、実は比較的最近のことだと言われています。1990年頃までは、話し言葉でも書き言葉でも「貴社」を使うのが一般的でした。
でも貴社は、「帰社」「記者」「汽車」など同じ発音の言い方が多いですよね。
極端な例では「きしゃからきしゃがきしゃできしゃした」=「貴社から記者が汽車で貴社した」などという言い方もあり得ます。
そのため、口語でもわかりやすい「御社」が広まったと考えられています。
また、実際に口で言ってみるとわかりますが、「きしゃ」は「おんしゃ」より少し言いにくい気がします。こんなところも「御社」が広まった理由かも知れません。
「御社」と「貴社」、使い方を間違えたらどうする?
使い分けをミスすると就活・面接に影響する?
「御社」も「貴社」も意味は同じ。
なのでたとえ間違って使ってしまっても、それほど神経質になる必要はないと思います。
実際の面接では緊張もありますから、間違えるケースも出てくるでしょう。
でも企業側も、この二語の使い分けに神経をとがらせているかと言えば、そうではありません。むしろ発言の内容など、もっと重視していることはたくさんあります。
「御社」と「貴社」の使い方を間違えていたら、選考に影響するか人事担当者500人に聞いたところ、「気になるが、影響しない」「影響しない」と回答した人の合計が75.4%という結果になりました。回答した人の理由を見ていくと、言葉遣いよりも、面接などでの発言内容や態度の方が大事だと考える人事担当者が多いようです。
*出典:リクナビ就活準備ガイド https://job.rikunabi.com/contents/howto/word/6586/
統一して使おう
というわけで、面接で「貴社」と言ってしまったり、メールで「御社」と書いてしまったからと言って、それが致命的なミスになるとは思いません。なかには神経質な会社もあるかも知れませんが、一般的には大丈夫だと思います。
ですが、同じ会合の会話のなかで「御社」と「貴社」をごちゃまぜに使ったり、ひとつのメールのなかに混在させるのは、なるべく避けたほうがよいでしょう。
御社様、貴社様は間違い
少し別な話ですが、「御社様」「貴社様」と使っているケースを、ごくたまに見聞きします。
ていねいに言おうとするあまり敬語表現を重ねてしまうわけですが、これは正しくない使い方です。過剰に丁寧な言い方をすると、かえって無礼だと受け取られる場合もあるので、注意しましょう。
会社(一般企業)以外を指す場合はどうする?
会社ではない組織を、同じようにていねいに表したい場合はどうすればよいのでしょう?
基本的には、話し言葉なら「御」、書き言葉なら「貴」を、その組織のカテゴリーの前につけることになります。
学校なら「御校」「貴校」
病院なら「御院」「貴院」
銀行なら「御行」「貴行」
といった具合です。
ほかには、
社団法人・NPO法人=「御法人」「貴法人」
財団法人=「御財団」「貴財団」
機構=「御機構」「貴機構」
組合=「御組合」「貴組合」
ちょっとニッチなところでは、
信用金庫=「御庫」「貴庫」
協会=「御会」「貴会」(〜協会でも可)
必ずしも固定的に考える必要はなく、たとえば最初の学校の場合でも、学校名が「〜〜学園」の場合は「御学園」「貴学園」を使ってもいいし、使ったほうがよい場合もあります。
またその学校が法人になっている場合、文脈によっては「御法人」「貴法人」を使うこともあるでしょう。
株式会社〇〇・△△支店の場合、「貴社・御社」と「貴店・御店」
財団法人〇〇協会の場合「貴法人・御法人」と「貴協会・御協会」
があり得ます。
自分のことをどう呼ぶ?
御社・貴社は相手のことを呼ぶときに使います。ではこの御社・貴社を使う文脈で自分のことを呼ぶときは、どのような言い方をすればよいのでしょう? 簡単にふれておきます。
わたし・わたくし・僕・自分
一人称には「わたし」「わたくし」「僕」「自分」などの言い方があります。
面接などのシーンではさすがに「オレ」「あたし」などという人はいないでしょう。でも「わたし」「わたくし」は使い慣れていないとなかなか自然に出てこない言葉です。特に、男性は「僕」や「自分」を使いたくなってしまうかも知れません。
ですが社会に出ると「わたし」「わたくし」が普通になります。早めに慣れておくことをお勧めします。
特に「御社」「弊社」を使っているような文脈では「僕」や「自分」はアンバランスに感じます。
また時として「僕」は偉そうに響くこともあるんですね。
例えば映画監督とか音楽の指揮者、気鋭の経営者や大学の先生など、いわゆるビッグな人が自分のことを「僕」と言っている場合があります。「僕」にはこういう使い方もあるため、人によってはこの「ビッグ感」を感じ取ってしまうケースが稀にあるわけです。
話がやや脱線しましたが、一人称は「わたし」「わたくし」を使うようにしましょう。
「弊社」「当社」
会社を指す言葉として「弊社(へいしゃ)」「当社」があります。
「御社」「貴社」が相手の会社を指す敬称ですが、
「弊社」「当社」は自分が所属している会社をさします。
「当社」は社内で自社を指す場合
「弊社」は社外に向け、へりくだった表現を使う場合
に用います。
ですが、いずれもその会社にすでに所属している人が自分の会社を指す言葉です。
それも、その人個人としてではなく、会社を背負って話をするニュアンスがあります。
就活生はあくまで個人ですし、まだ入社もしていません。なので、当然ながら、自分を指すために使うことはできません。
転職を希望して面接に臨む場合もあるかも知れません。
ですがこの場合は、立場はあくまで個人。
仮にまだ会社に所属している状態であったとしても、自分を指す際は「わたし」「わたくし」が適切です。
自分の会社を指す際は「現職」、やめた会社を指す際は「前職」などと表現することになるでしょう。
敬語の基本をおさらい
おもな敬語は3種だけ
就活・面接シーンでは、ふだんは使い慣れない敬語を要求されます。
「御社」「貴社」もそのひとつですが、ここで簡単に敬語について復習してみましょう。
敬語には主に次の三種類があり、それぞれ、考え方を整理するとわかりやすい。
尊敬語は、相手側を高める言葉。主語は相手。
謙譲語は、自分側を謙遜・へりくだることで相対的に相手を高める言葉。主語は自分。
丁寧語は、言葉そのものをていねいに言う表現。
ちなみに「御社」「貴社」は相手側を高める言葉で、分類としては尊敬語、ということになります。
弊社はこちらを下げる謙譲語になります。
簡単に苦手を克服する敬語練習法
でも分類そのものにこだわるより、実際に使えるようになるほうが大切ですね。
敬語には上の三つの考え方(相手を上げる、こちらを下げる、ていねいに表現する)があることを知り、ふだん使っている言葉を、これらの三種類の考え方で表現するとどうなるか考える習慣をつけると、苦手意識がなくなっていくでしょう。
試しに「行く」、「見る」をそれぞれの敬語表現で言ってみましょう。
行く
- 尊敬語 → いらっしゃる
- 謙譲語 → うかがいます
- 丁寧語 → まいります
見る
- 尊敬語 → ごらんになる
- 謙譲語 → 拝見する
- 丁寧語 → 見ます
間違い敬語の代表例
さきほど「御社様」「貴社様」という間違い例をご紹介しましたが、敬語っぽく言いたい気持ちが空回りしておかしな表現になってしまうケースはけっこうあります。少し例を挙げてみます。
お鞄の方をお持ちします → お鞄をお持ちします。
よろしかったでしょうか? → よろしいでしょうか?
おられますか? → いらっしゃいますか?
なるほどですね → おっしゃる通りですね
おっしゃられる通りです → おっしゃる通りです
とんでもございません → とんでもないことです、とんでもないことでございます
了解しました → 承知しました、かしこまりました
ご持参ください → お持ちください
お客様がお越しになりました → お客様がお見えになりました
普段から気をつけていると、「なんだか違和感があるな」と感じる敬語っぽい表現に気づくようになります。余裕がある時にきちんとチェックしておくと、敬語感覚がしっかりしてきます。
まとめ
以上、長くなりましたが「御社」と「貴社」の使い分けについてでした。
もういちど復習すると、
「御社」は話し言葉で
「貴社」は書き言葉で
使用します。
意味は両方とも「あなたの会社」。
たとえ間違って使っても、ひとつの状況で混在させなければ、たいていの場合は大丈夫だと思います。
ですが社会人として普通に使われている言葉なので、参考にしてくだされば幸いです。
自分の会社を指す「当社」「御社」についても、この機会に確認しておきましょう。

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