ニュースを見ていたところ、“クンジョル”という見慣れない単語が目に入りました。
韓国の作法らしいのですが、その格好が土下座に似ているとのこと。
調べてみるとこのクンジョル、過去に土下座と間違われて騒ぎになったことがあるようです。
今回のニュースも、高校生が修学旅行で韓国に行き、土下座をさせられるとかしないとかいう、フェイク記事が大もと。土下座という文字とともに、関係のないクンジョルの写真が使われていたようです。
しかし、そもそもクンジョルとは何なのか?
クンジョルは、正しくはどういう動作なのか?
土下座とどう違うのか?
クンジョルと土下座とは何か関係があるのか?
例によって、いろいろ疑問がわいてきます。
そのあたりの情報を集めてみました。
クンジョルとは?
クンジョルとは、韓国語で「큰절」と書き、意味は「ていねいなお辞儀」のことをさすそうです。
チョル、というのはお辞儀のことらしい。
動画で見るクンジョルの作法
土下座に似ていると言われるクンジョル、正しくはどうやって行なうのでしょうか?
韓国語ガイドの幡野泉さんという方が、『all About』で解説していらっしゃいます。
それによれば、男性は額の前で合わせた手を地べたにつけてお辞儀をする。
女性は地べたにつけず、少し浮かせたままに行なうそうです。
クンジョルとは、韓国で最も丁寧なお辞儀のこと。男性は額の前で合わせた手を地べたに付けますが、女性は少し浮かせたままにします。土下座みたい、なんて思わないでください。これは最高の敬意を表すときの礼のしかたです。韓国人の行うクンジョルは、不思議ととても厳粛な雰囲気が漂います。外国人が真似事でクンジョルをしても、韓国人の物腰、そしてそのとき放たれるオーラ には到底適いません。
出典:2/2 先取り!〜「秋夕(チュソク)」の韓国語 [韓国語] All About
これだけだと細かいところまではちょっとわかりませんね。
で、動画を探して見ました。
私はハングルを読めませんが、「큰절」という字が見えますので、こちらの動画がクンジョルにあたるのではないかと思います。
きれいな映像でわかりやすい。
私の印象ですが、見たところ土下座とはかなり違う感じがします。
ですが、もしこれはクンジョルじゃない、という人がご覧になっていたら教えてくださるとありがたいです。
クンジョルと土下座の違い
膝をつけて座り、手をついてお辞儀をするクンジョル。
確かに、表面的には土下座に似ているといえば、似ています。
特に、写真でシーンを切り取った場合には、一瞥して判別するのは難しいかも知れません。
鳩山さんが韓国で土下座?
日本では、2015年の8月に鳩山元首相が韓国を訪問。ソウルの西大門刑務所跡地のモニュメントの前でクンジョルを行ないました。
同刑務所は、日本の統治時代に抗日活動家が収監されていた場所で、元首相が土下座をして謝ったのではないかと、国内で騒ぎになりました。
しかしクンジョルは土下座とは違い、深い感謝や敬意を表すものだそう。
一方の土下座は、謝罪や懇願の意味で行なわれるものですね。
この点で、両者は全く異なるものと言えそうです。
EXOが日本でクンジョル?
クンジョルが、逆に韓国で物議をかもした例もあります。
2014年にEXOが埼玉スーパーアリーナでファンミーティングを行なった時、メンバーのセフンさんとD.Oさん、チャニョルさんがクンジョルを行なったそうです。
この時はファンの人たちが、韓国や中国ではまだしたことがないクンジョルを日本人の前で行なったとして、かの地のファンの人たちが怒った模様。
「深い敬意と感謝を、我々より先に日本で? はぁ?」という感じだったのかも知れません。
クンジョルは、さきほどの動画を見ても、土下座とは全く違う雰囲気。
幡野さんが引用の中で書かれているとおり厳粛なムードがあり、行なう人の内側には、一種の威厳のようなものが蔵されているようにも感じられます。
仮に表面的なかたちの上では似ているとしても、内にこめられる気持は全然違うものになりそう。
クンジョルは土下座のルーツなのか?
ひとつ湧いてくる疑問は、韓国で行なわれて来たこのクンジョルが、土下座の起源になっているのではないかという想像。
意味合いは全然違うとしても、地べたに膝をついて両手をつき、頭を低く下げるという動作が日本に伝わり、ところを替えて意味合いも変えて行った、という想像は容易に浮かんでくるわけです。
とはいえこれは、よくわかりません。
中国起源の文化が朝鮮半島を経て日本に伝わって来たというパターンは確かに多い。
ですが、wikipediaを見ると、『魏志倭人伝』のなかに、邪馬台国の人々が土下座に似たことをしていたという記載が出てくるそうです。また、埴輪にも似たような格好をしているものがあるとか。
『魏志倭人伝』には邪馬台国の風習として、平民が貴人と道端で出会うと、「道端で平伏して拍手を打つ」との記載があり、古くからの日本の習慣であったと思われる。古墳時代の埴輪の中には平伏し、土下座をしているようなものも見受けられる。
出典:土下座 – Wikipedia
『魏志倭人伝』は三世紀の成立ですからかなり古い。ここに土下座が出てくるとしたら、伝来したものではない、と見る事ができるかも知れません。ただ、これより前の時代にも大陸との交流が全く無かったかと言えば、そうも言い切れないでしょう。
クンジョルも土下座も、どちらも日常的にはおこなわない「特別」な動作であることは間違いありません。
ここ一番の時に膝と掌をつき、頭を下げてその“特別”さを表現するというのは、ある種自然なことなのかも知れません。
ともかく、知ることで誤解の種を少しでも減らせたらと思います。
ご覧くださり、ありがとうございました。
コメント
仄聞したところによりますと、土下座も昔は感謝を表すものだったそうです。