飲食店での長居客への効果的な断り方・例文

飲食店での長居客の断り方と例文集 断り方

お客様にそろそろお帰りいたきたいのだけれど、どう声をかけたらよいか……

長居するお客様への対応に悩む飲食店オーナーやスタッフの方は少なくありません。
特に一人で切り盛りする小規模店舗や、人手不足に悩む店舗では深刻な問題となっています。

この記事では、カフェオーナー、居酒屋店長、新規開業者それぞれの視点から、具体的な断り方の例文と対応策をご紹介します。

この記事を読むと以下のことがわかります:
・店舗形態や状況に応じた、具体的で使える声かけフレーズ
・お客様との良好な関係を保ちながら適切な退店を促す方法
・長居客の心理に寄り添いながら、スムーズな退店を促すコツ

私については、こちらをご覧ください.

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シーン別の長居客の断り方

一人カフェオーナー(徳永朱音さん)のケース

念願だった自家焙煎珈琲店を開いて8ヶ月。朱音さんは毎日、一人で店を切り盛りしています。最近では常連のお客様も増え、珈琲豆の小売りも軌道に乗ってきました。ですが、ノートPCを広げて長時間作業をするお客様が増えてきました。特に午後の時間帯は、豆の小売りのお客様が立ち寄られる機会も多く、限られた席数での営業に課題を感じています。せっかく来店くださるお客様には快適に過ごしていただきたいものの、長時間の利用については何らかのルール作りが必要だと考えているところです。

小規模カフェでは、限られた席数で多くのお客様に快適にご利用いただくための工夫が欠かせません。特にPC作業などでの長時間利用が増える中、適切なルール作りと丁寧な声かけが重要です。
以下の例文を、状況に応じて活用してください。

【混雑時の声かけ】

申し訳ございません。
ただいま店内が混み合ってまいりまして、
お待ちのお客様もいらっしゃいます。

お食事がお済みのお客様には、
お席を譲っていただけますと幸いです。

【追加オーダーを促しながらの声かけ】

長時間のご利用ありがとうございます。

申し訳ございませんが、当店では2時間を目安に
ワンオーダーをお願いしております。

お飲み物の追加は如何でしょうか?

【営業時間変更の案内】

お客様、本日は誠にありがとうございます。

15時からは豆の焙煎と小売りの時間とさせていただいております。
大変恐縮ですが、そろそろお席の片付けに
入らせていただいてもよろしいでしょうか。

居酒屋シフトマネージャー(諏訪竜平さん)のケース

新宿の繁華街で居酒屋の店長代理を務める竜平さんは、ここ最近、深夜の店じまいに頭を悩ませています。特に常連のサラリーマンの方々が、盛り上がっている最中に声をかけづらく、スタッフの終電が危うくなることも。本部からは「従業員の働き方改革」と「客単価アップ」の両立を求められ、板挟みの毎日です。かといって、お店の大切な常連様に冷たい対応はできません。どうすれば営業時間内に気持ちよくお帰りいただけるか、試行錯誤の日々が続いています。

居酒屋では特に、常連のお客様との関係性を損なわずに閉店時間を意識していただくことが重要です。以下のような声かけを工夫してみましょう。

【最終オーダー時の声かけ】

いつもご贔屓にありがとうございます。

申し訳ございませんが、そろそろラストオーダーのお時間です。
締めのお料理やお飲み物は如何でしょうか。

【スタッフの帰宅時間を考慮した声かけ】

大変申し訳ございません。

スタッフの最終電車の関係で、
本日はこの辺りでお客様にご協力をお願いできますでしょうか。

また明日以降も変わらぬご愛顧を賜れますと幸いです。

【翌日の来店を促す声かけ】

本日は楽しいお時間をありがとうございました。

明日は新しい日本酒も入荷予定でございます。
ぜひまた明日も、お早めの時間にお待ちしております。

新規開業予定者(芹沢友樹さん)のケース

20年のサラリーマン生活に区切りをつけ、念願のイタリアンレストランのオープンを2ヶ月後に控えた友樹さん。開業に向けて準備を進める中で、特に気になっているのが予約制コース料理店での時間管理です。前職で接待に使っていた店舗では、席を長時間占有する常連客がいて、後の予約客が待たされる場面を何度か目にしました。新規オープンということもあり、お客様に不快な思いをさせることなく、かつスムーズな店舗運営を実現したいと考えています。

予約制のコース料理店では、適切な時間管理が料理の品質と顧客満足度の両方を左右します。以下のような声かけを心がけましょう。

【予約時の利用時間案内】

ご予約ありがとうございます。

当店のフルコースは2時間半を目安にご用意しております。
ゆっくりとお楽しみいただける時間配分となっております。

【食事の進行に関する声かけ】

お料理はお楽しみいただけましたでしょうか。

デザートのご準備が整いましたら、
お席にお持ちさせていただきます。

ごゆっくりお楽しみください。

【コース終盤での声かけ】

メインディッシュはいかがでしたでしょうか。

本日のデザートは特製ティラミスをご用意しております。
シェフおすすめのデザートワインと共に
お楽しみいただければと存じます。

いろいろな場面で使える断り方の例文集

ここまで、三つの典型的なケースについて具体的な対応例をご紹介してきました。ここからは、それ以外の一般的な場面で使える例文をご紹介します。状況に応じてアレンジしてご活用ください。

【混雑時の声かけ】

申し訳ございません。
お食事がお済みのお客様には、
お席を譲っていただけますと幸いです。

ご協力いただいた方には、次回ご来店時に使える
お飲物券をご用意させていただいております。

【長時間の学習利用に関する声かけ】

いつもご利用ありがとうございます。

申し訳ございませんが、当店では
ご注文から2時間を目安とさせていただいております。

追加でお飲み物などはいかがでしょうか。

【団体でのご利用時の声かけ】

楽しいお時間をお過ごしいただき、ありがとうございます。

このあと団体様のご予約を頂戴しておりまして、
お席の準備をさせていただきたく存じます。

お手数ですが、お会計は別々でも承れますので、
そろそろご準備いただけますでしょうか。

【お子様連れでの長時間利用への声かけ】

お子様も楽しんでいただけて何よりです。

申し訳ございませんが、そろそろ
ランチタイムのお席の準備に入らせていただきます。

お子様向けのドリンクやデザートは
テイクアウトでもご用意できますので、
よろしければご利用くださいませ。

【カウンター席での作業利用への声かけ】

長時間のご利用ありがとうございます。

カウンター席ではお一人様での
お食事のお客様も多くいらっしゃいますので、
テーブル席へのご案内は如何でしょうか。

お荷物の移動など、お手伝いさせていただきます。

【夜の部への切り替え時の声かけ】

本日は長時間ありがとうございます。

この後17時からディナータイムとなり、
メニューと価格帯が変更となります。

よろしければ一度お会計をお願いできますでしょうか。
夜の部からは、また改めてのご案内とさせていただきます。

長居客の断り方の考え方

長居への対応は、単にお客様に退店を促すだけの問題ではありません。店舗の収益性と顧客満足度の両立が求められる、繊細な課題です。ここでは当blogでご提案させていただいている4C分析とDREAMメソッドを用いて、効果的な対応の考え方をご紹介します。

まず、状況を4つの観点から分析します。

Context(状況):時間帯や混雑状況、お客様との関係性を確認します。常連のお客様なのか、初めての方なのか、また店舗の繁忙期なのかなども考慮すべき重要な要素です。

Consequence(結果):声をかけることで生じる可能性のある結果を予測します。お客様の反応、スタッフへの影響、店舗の評判への影響などを総合的に考えます。

Culture(文化):店舗の雰囲気や客層に合った対応を心がけます。高級店と気軽な居酒屋では、適切な声かけの方法が異なってきます。

Capacity(能力):店舗のキャパシティや人員配置を考慮します。特に人手不足の場合は、より計画的な対応が必要です。

そして実際の声かけは、DREAMメソッドに従って行います。

効果的な声かけの5つのポイント

はっきりと意図を伝える(Direct)

曖昧な表現は、かえってお客様に不快な思いをさせることがあります。「そろそろ…」「できれば…」といった遠回しな言い方は避け、店舗のルールや営業の区切りを明確に伝えましょう。

申し訳ございません。
この席は17時からのご予約を頂戴しております。

敬意を示す(Respect)

お客様に感謝の気持ちを伝え、丁寧な言葉遣いを心がけます。長時間の利用であっても、まずは感謝の意を示すことで、その後の声かけがスムーズになります。

本日は長時間のご利用、誠にありがとうございます。

理由を添える(Explain)

なぜその対応が必要なのかを、簡潔に説明します。店舗の運営方針や区切りの良い理由を伝えることで、お客様の理解を得やすくなります。

18時からディナータイムとなり、
店内の準備をさせていただく時間となっております。

別の選択肢を提案する(Alternative)

単に「できません」で終わらせず、可能な代替案を提示します。これにより、お客様の要望にも配慮していることを示せます。

テイクアウトメニューもご用意しておりますが、
いかがでしょうか。

関係性を大切にする(Maintain)

一度きりのお客様ではなく、また来ていただけるお客様として接します。特に常連のお客様には、次回の来店を楽しみにしていることを伝えましょう。

また明日以降も、ぜひご利用くださいませ。
朝10時からオープンしております。

これら5つの要素を意識することで、お客様への声かけがより自然で効果的なものとなります。ただし、すべての要素を1回の声かけに詰め込む必要はありません。状況に応じて、必要な要素を組み合わせることが大切です。

例えば、以下のような声かけは、これらの要素をバランスよく含んでいます:

いつもご利用ありがとうございます。(Respect)

申し訳ございませんが、このお席は
17時からディナータイムの準備に入らせていただきます。(Direct, Explain)

お飲み物は1階のカフェスペースでもお楽しみいただけます。
ご案内させていただきましょうか。(Alternative, Maintain)

このように、状況に応じて適切な要素を組み合わせることで、より効果的な声かけが可能となります。

ここで用いた4C分析とDREAMメソッドについては、次のリンク先の記事で詳しく紹介しています。
断るのが苦手だったり、いつも不本意ながら頼まれごとを引き受けてしまい、損をしている気がする、、、という方にぜひご覧いただけたらと思います.
断り方が人生を変える

やってはいけない対応

長居客への対応において、特に注意が必要なのは以下のような態度や行動です。たとえ状況が切迫していても、これらの対応は店舗の評判を大きく損なう可能性があります。

1. 感情的な対応

感情的な態度は、接客の基本に反するものです。以下のような態度は絶対に避けましょう:
・いらだちや焦りを態度に出す
・そわそわした素振りを見せる
・ため息をつく
・表情をこわばらせる
・荒々しい動作をする
・声のトーンを必要以上に変える

2. 威圧的な態度

お客様に圧力をかけるような行動は、むしろ逆効果になりがちです:
・執拗な食器の片付け
・意図的な掃除や物音
・長時間の立ち話
・お客様の近くでの作業
・必要以上の視線
・大きな物音を立てる店内作業

3. 一貫性のない対応

対応の一貫性が欠けると、店舗の信頼性が損なわれます:
・お客様によって基準が異なる
・スタッフ間で対応がばらばら
・時間帯によってルールが変わる
・常連とそうでない方で態度を変える
・混雑時と空いている時で異なる対応をする

このような対応は、一時的には効果があるように見えても、長期的には必ず問題を引き起こします。どのような状況でも、お客様への敬意を忘れず、店舗として一貫性のある対応を心がけることが重要です。

特に、スタッフ全員が同じ認識を持ち、統一された対応ができるよう、定期的な確認と教育が欠かせません。

FAQ

Q.予約時に利用時間を伝えていなかった場合は?
A.その場合でも、丁寧に状況を説明することが大切です。「次のご予約のお客様の準備時間」という観点から声をかけるのが効果的です。

Q.学生の勉強利用が多い場合の対策は?
A.入口付近に「学習目的でのご利用はご遠慮ください」といった掲示を出すことで、事前に防ぐことができます。また、時間帯によって利用可能とするなど、柔軟な対応も検討できます。

Q.常連客への対応で気をつけることは?
A.特に丁寧な対応を心がけましょう。翌日以降の来店を促すなど、関係性を重視した声かけが重要です。

 

まとめ

長居客への対応は、飲食店運営における永遠の課題と言えるかもしれません。しかし、適切な声かけと対応の仕方を身につけることで、お客様との良好な関係を保ちながら、効率的な店舗運営を実現することは可能です。

ポイントは、常にお客様への敬意を忘れず、状況に応じた適切な対応を心がけること。そして、スタッフ全員が同じ認識を持って対応することです。

この記事でご紹介した例文や対応方法が、皆様の店舗運営のお役に立てれば幸いです。

ここまでご覧くださり、ありがとうございました.

なお本文中に登場する人物たちは、状況を思い浮かべやすいように作成した架空のキャラクターです.皆さんの状況に近いケースを選んで参考にしてくだされば幸いです.

ところでこれは私見ですが、「断り方」は小さな自己主張の第一歩だと思っています.断ることが苦手だという方はぜひこちらの記事もご覧いただければと思います.
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私が「断り方」の研究を始めたのは、ある危機的な出来事がきっかけでした。 フリーランスとして独立して5年目、順調に仕事を重ねる中で、私は重大な過ちを犯していました。「NOと言えない性格」が災いし、次々と舞い込んでくる仕事を抱え込んでいったので...
最後の最後に、ひとつだけお願いがあります.
「こんな断り方をしたらうまくいった」
「こんな断り方はまずかったと反省している」
という体験を、もしあなたがお持ちでしたら、ぜひコメント欄で共有してください.
同じお悩みを抱えたみなさんの助けになると思いますので、ぜひよろしくお願いします!

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