「この案件、断りたいけど…これから先のことを考えると…」
フリーランスやビジネスパーソンの多くが、この悩みを抱えています。案件を断ることは決して悪いことではありませんが、関係性を損なわずに上手く断るのは簡単ではありません。
この記事では、フリーランス、SESエンジニア、クリエイターなど、立場やシーンに応じた具体的な断り方を、実践的な例文とともにご紹介します。4C分析とDREAMメソッドという独自のフレームワークを使って、プロフェッショナルな案件の断り方をお伝えします。
この記事を読むと以下のことがわかります:
・立場や状況に応じた、信頼関係を損なわない具体的な断り方
・案件を断る際の正しい判断基準と実践的なアプローチ方法
・次の仕事にもつながる、プロフェッショナルな断り方のコツ
私については、こちらをご覧ください。
立場別・シーン別の案件断り方ガイド
フリーランスが継続案件を断るケース
Webライターの佐藤さん(28歳)は、クラウドソーシングで1年間活動を続けてきました。着実にスキルを磨き、徐々に単価の良い案件も増えてきました。しかし、活動初期から継続している低単価の案件が足かせとなり、より良い仕事の時間が確保できない状況に。この案件を上手く断り、ステップアップを目指したいのですが、クライアントとの関係性を損なうことを恐れて踏み出せないでいます。
以下は、佐藤さんのような状況での断り方の例文です。単価アップの交渉から始めて、状況に応じて断り方を変えていく形を取ります。
【例文1:単価交渉を含めた丁寧な断り方】
お世話になっております。
いつも〇〇の案件をご依頼いただき、ありがとうございます。
突然のご連絡となり恐縮ですが、今後の取引について相談させていただきたく存じます。
この1年間、案件を通じて多くの学びを得ることができ、
ライターとしても成長させていただきました。
しかしながら、他案件との兼ね合いもあり、
現状の単価では継続が難しい状況となってまいりました。
大変心苦しいお願いではございますが、
記事1本あたり〇〇円程度まで単価を見直していただくことは可能でしょうか。
ご検討いただけましたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
【例文2:スケジュール調整による部分的な継続を提案】
お世話になっております。
いつも案件をご依頼いただき、ありがとうございます。
現在の納品ペースでの対応が難しい状況となり、
ご相談させていただきたく存じます。
月10本のご依頼を月5本程度に調整させていただくことは可能でしょうか。
納品の質を保ちながら継続させていただきたく、ペースの見直しをお願いできればと考えております。
もしご都合が合わない場合は、
大変申し訳ございませんが案件を終了とさせていただきたく存じます。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
【例文3:完全終了の通知】
お世話になっております。
いつも案件をご依頼いただき、誠にありがとうございます。
突然のご連絡となり大変恐縮ですが、
今月末をもちまして案件を終了させていただきたく存じます。
この1年間、多くの経験を積ませていただき、心より感謝しております。
しかしながら、近年のライティング業界の変化に伴い、
専門性の高い分野に特化した案件に注力する必要性を感じております。
円滑な引き継ぎのため、必要な資料は整理してお渡しさせていただきます。
また、新しいライターが決まるまでの期間は、
可能な範囲でサポートをさせていただく所存です。
突然のお願いとなり、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
SESエンジニアが案件を変更するケース
山田さん(35歳)は、大手金融システムの保守運用案件で2年間活躍してきました。チームの信頼も厚く、現場での評価も高い存在です。しかし最近、上流工程を含む新規開発案件のオファーを受け、キャリアアップのチャンスだと考えています。これまでお世話になった現場との良好な関係を維持しながら、新たなステップに進むための決断をしようとしています。
プロジェクトの状況や人間関係に配慮しながら、以下のような断り方が効果的です。
【例文1:引き継ぎを重視した丁寧な断り方】
お世話になっております。
2年間に渡り大変お世話になっておりますが、
来月末をもちまして本案件を終了させていただきたく、ご相談させていただきます。
突然のお申し出となり、大変申し訳ございません。
キャリアの方向性について熟考した結果、
新規開発案件にチャレンジする決意をいたしました。
これまでの業務内容や注意点については、詳細な引き継ぎ資料を作成させていただきます。
また、後任の方が決まりましたら、スムーズな引き継ぎのため
できる限りのサポートをさせていただく所存です。
この2年間で得た経験と、チームの皆様から学ばせていただいたことは、
今後の糧として大切にしていきたいと思います。
ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
【例文2:関係維持を意識した終了通知】
いつもお世話になっております。
大変心苦しいお願いとなりますが、〇月末での案件終了について
ご相談させていただきたく存じます。
現在のプロジェクトでは、チームの皆様に支えていただき、
多くの経験を積ませていただきました。
この経験を活かし、さらなる成長のため、新たな分野にチャレンジしたいと考えております。
もし可能でございましたら、以下のスケジュールでの引き継ぎを
ご提案させていただきたく存じます。
・〇月第1週:引き継ぎ資料の作成と確認
・〇月第2-3週:後任の方との並行作業
・〇月第4週:最終確認と調整
何卒ご理解いただけますと幸いです。
【例文3:次回を見据えた別れ方】
プロジェクトマネージャー様
2年間、大変お世話になりました。
このたび、〇月末での案件終了についてご相談させていただきたく存じます。
新しい技術分野でのスキルアップを目指し、異なる案件にチャレンジする機会をいただきました。
このプロジェクトで培った経験を、次のステップで活かしていきたいと考えております。
現在担当している業務については、次の方へスムーズに引き継げるよう、
マニュアルの整備と手順書の更新を進めております。
また、今後も御社の案件に携わる機会がございましたら、ぜひともよろしくお願いいたします。
突然のご相談となり申し訳ございません。
ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
クリエイターが新規案件を断るケース
中村さん(24歳)は、SNSを通じて依頼が増えている新進気鋭の動画編集者です。YouTuberやインフルエンサーからの依頼が口コミで広がり、うれしい反面、仕事量の調整に頭を悩ませています。特に、SNSでの気軽なやり取りから始まる依頼は、フランクな関係性ゆえに断りづらく感じています。
カジュアルな関係性を保ちながら、プロフェッショナルとしての立場も明確にする例文をご紹介します。
【例文1:カジュアルな案件断り方】
ご依頼ありがとうございます!
大変申し訳ないのですが、現在手掛けている案件が予想以上に大掛かりになってしまい、
新規の依頼をお受けするのが難しい状況です。
実は今月いっぱいは、スケジュールがかなりタイトになっています。
もし来月以降でも大丈夫でしたら、ぜひ改めてご相談させてください!
突然の返信になってしまい、申し訳ありません。
またの機会を楽しみにしています。
【例文2:スケジュール調整を提案する方法】
お声がけいただき、ありがとうございます!
〇〇さんの企画、とても面白そうですね。
ただ、今週から来週にかけては既存の案件で予定が埋まっており、
納期に間に合わせることが難しそうです。
もし以下の日程で調整可能でしたら、ぜひ参加させていただきたいです。
・〇月〇日以降での納品
・編集時間は3日程度必要
・ラフ確認は1回可能
ご検討いただけますと幸いです!
【例文3:代替案を提示する形式】
素敵なお話をいただき、ありがとうございます。
実は今、複数の動画案件が重なっていて、新規のお仕事をお受けするのが難しい状況なんです。
ただ、私の知り合いで似たような編集スタイルの方がいらっしゃいます。
もしよろしければご紹介させていただけますが、いかがでしょうか?
スケジュールと予算感も近い範囲だと思います。
突然のご提案で恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。
またの機会を楽しみにしております!
案件を断るシチュエーション別例文集
電話での案件の断り方
電話での案件断りは、その場で即答を迫られる分、より慎重な対応が必要です。基本的な流れとしては「感謝の言葉」→「現状説明」→「断りの意思表示」→「次回への期待」という順序で伝えると、スムーズに意図が伝わります。
【例文1:初めての取引先からの電話】
ご連絡ありがとうございます。
大変興味深いお話なのですが、現在進行中の案件で手一杯の状況でして。
今回は残念ながらお受けできない状況です。
可能でしたら、次回は〇月以降でしたらスケジュールの調整が効くかもしれません。
その際は、ぜひご相談いただけますと幸いです。
【例文2:継続取引のある企業からの電話】
いつもお世話になっております。
ご提案いただいた案件について、大変申し訳ないのですが、現状では対応が難しそうです。
というのも、〇〇案件の対応に予想以上の時間がかかっておりまして。
ご期待に添えず申し訳ございません。
今回の件でスケジュール感がわかりましたので、
次回は余裕を持った計画を立てさせていただきたいと思います。
【例文3:紹介された案件への電話対応】
この度は、ご紹介いただき誠にありがとうございます。
ご提案の内容、非常に魅力的に感じております。
ただ、現在の案件状況を考えますと、十分な時間を確保することが難しく、
中途半端な対応になってしまう可能性が高いと判断いたしました。
〇〇様からのご紹介ということで、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
次回は、ぜひ良いご提案ができるよう、調整させていただければと思います。
ビジネスメールでの断り方
ビジネスメールでの断りは、文書として記録が残るため、より慎重な言葉選びが求められます。特に「なぜ断るのか」という理由の説明と、「今後の可能性」について言及することが重要です。
【例文1:大規模案件を断る場合】
お世話になっております。
今回のプロジェクトについて、ご相談させていただきたく存じます。
ご提示いただいた案件の規模と重要性を考慮した結果、
現在の体制では責任ある対応が難しいと判断いたしました。
弊社の対応可能な範囲としては、以下の部分に限定させていただきたく存じます。
・〇〇の部分的なサポート
・〇〇についてのアドバイザリー業務
案件全体の一括受注は難しく、誠に申し訳ございません。
【例文2:スキルマッチしない案件を断る場合】
お世話になっております。
ご提案いただいた案件について、慎重に検討させていただきました。
しかしながら、求められる技術要件と現在の弊社の対応力には、
一部不足があることが判明いたしました。
中途半端な対応は避けたいと考え、今回は辞退させていただきたく存じます。
なお、〇〇の分野であれば、豊富な実績がございますので、
そちらについてご興味がございましたら、ぜひご相談ください。
【例文3:予算が合わない案件を断る場合】
お世話になっております。
案件のご相談、ありがとうございます。
提示内容を詳細に確認させていただきましたが、通常の報酬額と
かなりの開きがございまして、採算面で課題が大きいと判断いたしました。
ご参考までに、同規模の案件の場合、一般的な報酬の目安は
以下のようになっております。
・〇〇業務:月額〇〇円~
・〇〇作業:1件あたり〇〇円~
もし今後、予算面での調整が可能な案件がございましたら、
改めてご相談いただけますと幸いです。
プロフェッショナルな案件断りの考え方
4C分析で見る案件断りの判断基準
プロフェッショナルな案件断りには、明確な判断基準が必要です。ここでは当blogでご案内している4C分析を用いて、案件を断るべきかどうかを判断する基準をご紹介します。
まず「Context(文脈)」の観点から、その案件がどのような背景で持ち込まれたのかを考えます。紹介経由なのか、過去の実績からの依頼なのか、単なる一括見積もりの一環なのかによって、断り方も変わってきます。
次に「Consequence(結果)」として、その案件を受けることで生じる影響を考えます。特に既存案件への影響や、長期的なキャリアプランとの整合性を検討します。
「Culture(文化)」の視点では、業界の慣習や依頼元の企業文化を考慮します。例えばIT業界では1ヶ月前の通知が一般的ですが、クリエイティブ業界ではより柔軟な対応が求められることもあります。
最後に「Capacity(能力)」として、自身のスキルや時間的な余裕を正直に評価します。見栄や遠慮で無理な受注をすることは、結果的に誰の利益にもなりません。
DREAMメソッドによる実践的アプローチ
実際の断り方については、DREAMメソッドという体系的なアプローチが効果的です。
Direct(直接的)な姿勢で、曖昧な返事は避けます。「検討します」と言って結局断るのでは、相手の時間を無駄にしてしまいます。例えば「申し訳ありませんが、今回は辞退させていただきます」というように、明確な意思表示をすることが重要です。
Respect(尊重)の念を示し、相手を選んでもらったことへの感謝を伝えます。これは社会人としての基本的なマナーです。例えば「ご指名いただき光栄です」「魅力的なご提案をありがとうございます」といった言葉で、相手への敬意を示します。
Explain(説明)では、断る理由を簡潔に説明します。言い訳がましくならない程度に、相手が理解できる理由を示します。例えば「現在、大型案件を抱えており、十分な時間が確保できない状況です」というように、具体的かつ明確な理由を伝えます。
Alternative(代替案)として、可能な範囲で別の提案をします。ビジネスにおいて、単純な断りで終わらせないことが重要です。例えば「来月以降であれば対応可能です」「〇〇の部分であれば協力できます」など、建設的な提案を心がけましょう。
Maintain(関係維持)の姿勢を示し、今後の可能性を残します。ビジネスは継続的な関係性が基本だからです。例えば「今後、状況が改善しましたら、ぜひご相談させてください」といった言葉で、将来への期待を示します。
ここで用いた4C分析とDREAMメソッドについては、次のリンク先の記事で詳しく紹介しています。
断るのが苦手だったり、いつも不本意ながら頼まれごとを引き受けてしまい、損をしている気がする、、、という方にぜひご覧いただけたらと思います。
→断り方が人生を変える
避けるべき案件の断り方
信頼関係を損なう断り方
断り方を間違えると、せっかくの信頼関係を一気に崩してしまうことがあります。特に以下のような対応は避けるべきです。
まず、既読無視や返信の放置は論外です。たとえ断る場合でも、できるだけ早く意思表示をすることが重要です。また「今は忙しいので」という曖昧な返事を繰り返すのも、相手の時間を無駄にする最悪の対応です。
重要な案件であればあるほど、対面やビデオ通話での説明が望ましいこともあります。メールだけで済ませようとするのは、時として相手への配慮に欠ける行為となります。
評判を下げる断り方
単に一案件の断りにとどまらず、業界での評判を下げかねない断り方もあります。例えば虚偽の理由を述べる、つまり嘘をつくことです。業界内での噂は意外な速さで広がるもので、嘘がばれた時点で信用を失います。
また、相手の予算や案件内容を批判するような断り方も避けるべきです。どんな案件にも、依頼者なりの事情や背景があります。その立場を理解せず、高圧的な態度を取ることは、プロフェッショナルとして適切ではありません。
二度と声がかからなくなる断り方
一度の対応で、今後のすべての可能性を閉ざしてしまう断り方があります。例えば感情的な態度を取る、約束を反故にする、無責任な対応を重ねるなどです。
特に引き継ぎを疎かにすることは、最も重大な信頼失墜につながります。たとえ案件を断る場合でも、その後の対応をきちんとフォローすることで、むしろ信頼を深められる場合もあります。
よくある質問と回答
断ると今後の案件に影響はある?
案件を断ること自体は、ビジネスとして当然の判断です。むしろ、無理な受注で質の低い成果物を提供する方が、長期的な信頼関係を損ねることになります。
大切なのは「断り方」です。丁寧な説明と、建設的な代替案の提示があれば、むしろ信頼関係が深まることもあります。プロフェッショナルな判断として評価される可能性も高いでしょう。
単価交渉と合わせて行うべき?
状況によっては、断る前に単価交渉を試みる価値があります。特に継続案件の場合、あなたの価値をよく理解しているクライアントであれば、交渉の余地は十分にあります。
ただし、交渉する場合は市場相場や自身の実績に基づいた、説得力のある根拠を示すことが重要です。感情的な交渉は避け、お互いが納得できる着地点を目指しましょう。
引き継ぎはどこまで必要?
基本的に、後任者が混乱なく業務を継続できるレベルまでの引き継ぎが必要です。具体的には以下のような内容を整理しておくとよいでしょう。
・案件の全体像と現状
・日常的な業務の手順
・注意点や失敗しやすいポイント
・重要な連絡先や参照すべき資料
ただし、過度に詳細な引き継ぎは後任者の裁量を狭める可能性もあります。基本的な枠組みを示しつつ、細かい部分は後任者の判断に委ねる姿勢が望ましいでしょう。
まとめ:円滑な案件断りのポイント
案件を断ることは、フリーランスやビジネスパーソンにとって避けては通れない重要なスキルです。適切な判断基準を持ち、プロフェッショナルな対応を心がけることで、むしろ信頼関係を深めるチャンスともなります。
私自身、フリーランスとして活動を始めた当初は案件を断ることに大きな不安を感じていました。しかし、経験を重ねる中で、むしろ適切な「断り方」こそが、長期的な信頼関係を築く鍵となることを学びました。
この記事で紹介した方法が、皆さんのビジネスの一助となれば幸いです。時には「NO」と言える関係性こそが、本当の意味での対等なビジネスパートナーシップなのかもしれません。
ここまでご覧くださり、ありがとうございました.なお本文中に登場する人物たちは、状況を思い浮かべやすいように作成した架空のキャラクターです.皆さんの状況に近いケースを選んで参考にしてくだされば幸いです.
ところでこれは私見ですが、「断り方」は小さな自己主張の第一歩だと思っています.断ることが苦手だという方はぜひこちらの記事もご覧いただければと思います.
「こんな断り方をしたらうまくいった」
「こんな断り方はまずかったと反省している」
という体験を、もしあなたがお持ちでしたら、ぜひコメント欄で共有してください.
同じお悩みを抱えたみなさんの助けになると思いますので、ぜひよろしくお願いします!
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