あずさ2号(狩人)の歌詞の意味〜“あなたの知らない人”と浮気した?

特急あずさ

狩人の歌う『あずさ2号』、今も変わらず好んで歌われている、日本の歌謡曲史上の大ヒット曲です。イケメンデュオのはしりが聞かせる美しいサビのハモリは、わかっていても盛り上がってしまいますね。

ところがこの『あずさ2号』、歌詞そのものに注目すると、ちょっとした違和感が

恋人にさよならも告げず、ほかの男と信濃路へ・・・?
これって浮気?
人としてどうなの?

ヒット曲なので何の疑いもなく歌ってしまうけど、いったん引っかかると、けっこう気になります。

というわけで今回は、昭和の名曲『あずさ2号』の歌詞にあらためて向き合い、その意味を考えてみました。
主観的な解釈ですが、もしかすると私と同じように気になっている方がいらっしゃるかもと思い、記事にしてみます。

アイキャッチ画像出典:転載フリー写真集(183系特急型電車)

なお『あずさ2号』の歌詞そのものは事情により掲載していません。もし歌詞をお探しでしたら、専門のサイトをご参照ください。(せっかく来てくださったのにすみません。)

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あずさ2号の歌詞の内容

『あずさ2号』の作詞は竜真知子さん。作曲は都倉俊一さんです。

『あずさ2号』の歌詞は、置き手紙のような形式をとっています。

主人公の女性がその胸中を、「あなた」に向かって語りかける。と同時に、この女性が自分自身を説得しているような趣も、少しある。

それはともかく、内容を見て行くと、次のような感じになるかと思います。

あなたとはもう別れなければなりません。
そのためにわたしは明日の朝あずさ2号に乗り、あなたと行くはずだった信濃路を旅します。
そしてあなたがいない寂しさを、行く先々で胸に刻もうと思います。
そこで感じる寂しさや辛さが、私の心に区切りをつけてくれると思うから。

・・・せつないですね。

特急あずさについて
特急あずさは1966年(昭和41)年に運行が始まった、主に新宿〜松本間を走る列車です。
「あずさ」という名前は、松本市付近を流れる梓川にちなんでつけられたそうです。

1994年からはE351系という新型車両の運用も始まり、こちらはスーパーあずさと呼ばれています。現在、8時ちょうどに新宿駅を出発するあずさはこのスーパーあずさで、号数は3号になっているそうです。

 

『あずさ2号』の歌詞の違和感〜ヒロインは身勝手?

問題はこのヒロインの旅の傍らに、「あなたの知らない人」がいることです。

「おいおい、、、男同伴ですか?」
「寂しさを胸に刻むなら、一人で旅したほうがいいんじゃない?」

って、突っ込みたくなりません?

このヒロインは寂しさを胸に刻むといいつつ、それを紛らわす相手をあらかじめ横にはべらせている。そして、本当に好きな「あなた」がいない空虚感を梃子に、その男にくっついて、本来の恋を忘れようとしている。

・・・

相当身勝手な人間じゃないですかっ!?

いやいやちょっと待て。
こんな酷い話がヒット曲になるはずはない。
私の読みがまだまだ浅いのでしょう。

8時ちょうどのあずさ2号は、かつて二つあった
主に新宿—松本間をつないでいる“あずさ”ですが、楽曲発表の1997年当時、8時ちょうどのあずさ2号は二つあったそうです。
というのは、新宿からの下り列車、松本からの上り列車、ともに8時ちょうどに出発していたのだとか。
もちろん楽曲に歌われているのは下り松本方面行きですけどね。

 

あずさ2号の歌詞の意味

ポイントと思えるのは、後半に出てくるシーン。

都会のすみで あなたを待って
私は季節に とり残された

にじみでる孤独感。

ヒロインは都会の片隅で「あなた」をずっと待っていた。
そして「季節」に置いて行かれてしまった、と言っています。

想像するにこの女性は、東京で一人暮らしをしてきたのでしょう。8時ちょうどにあずさ2号が出発するのは新宿駅です。そんな都会暮らしのなかで、幸福になるタイミングを逃すほど長い期間、「あなた」を待っていた。

「季節」というのは、まぁ普通に考えて、結婚のタイミングのことでしょう。
こう考えていくとこの二人、どうも“事情”があるっぽい。
いつか一緒になれるのでは、と期待を抱きつつ女性が待ち続けている状態と言えば、それは道ならぬ恋と相場が決まっています。
しかしその“季節”は来ない。悲しいことですがこれもお決まり・・・なのかも知れません。

だけどこのヒロインにとって「あなた」は今も彼女の青春そのもの
お別れを言うことはできそうにない。
だから、こんな形になってしまうことをどうか許してください・・・

こんな風にヒロインの置かれている背景を捉え直してみると、やはり胸の内の切なさが前面に迫って来ます。

あなたを思う気持ちを払拭しなければならない。
でもそれができない。
だから、あなたがいない状況をとにかく作ることにした。
あなたと旅することになっていた場所へ、あなた無しで行くことによって。

今は無きあずさ2号
1978年、下り方面のあずさには奇数番号がふられることになり、新宿から信濃路へ向かうあずさ2号は無くなってしまったそうです。

「あなたの知らない人」は誰?

主人公の女性は、淡々と語りつつも激しく葛藤しています。
その内面の戦いにおいては、前半でひっかかった「あなたの知らない人」は、ほとんど問題ではありません。実際、歌詞の冒頭でほのめかされるだけで、後のほうでは全く出て来ない。

そもそもこの「あなたの知らない人」は、実在するのでしょうか?
これはヒロインがついたでは?

上の方で書いたとおり、寂しさを刻むだけなら、一人のほうがよいのです。
「あなた」が私を追ってこないようにするため、あるいはそんな期待を自分自身がもたないようにするための、予防線のようなものかも? そう考えると、この『あずさ2号』の歌詞が、置き手紙形式になっているのも頷けます。
もしこれが「あなた」への手紙で無かったら、そこに「あなたの知らない人」は登場しなかったのではないでしょうか。

 

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「あなた」はその嘘に気づいている

一方、この置き手紙を受け取った「あなた」は、それをどう受け止めたでしょう?

ここまでの想像が当たっているとしたら、この「あなた」こそひどい男なんですよね。
ヒロインの青春時代をいわば奪った、多分妻子もち。それでもまだ愛されている。

手紙を目にした直後は、彼女に自分が知らない男がいたなんて、と驚くかも知れません。
でも手紙の後半を読み進めて行くうちに、これは嘘なんだなと感じる、と思います。

彼は試されているのかも知れません。
列車は8時ちょうどだと書いてあるのですから、引き止めに行くことができます。
彼女の切ない嘘を見破ったとしたら尚更愛しさが募るはず。迎えに行かずにはいられない・・・かも知れない。
彼女は、彼が追ってこないように他の男の存在をほのめかした。それでも8時ちょうどと時刻を書いてしまうのは、心のどこかで奇跡を待っている・・・このあたりは恋ですからね、葛藤し、揺れていると見てもよいのかも知れない。
 

『あずさ2号』の功罪
『あずさ2号』のリリースは1977年3月25日。
狩人のデビュー曲で、80万枚を売り上げたとも言われています。
これによって狩人は、日本の戦後歌謡史に鮮やかに名前を刻んだと言えるでしょう。
ただし『あずさ2号』がヒットしすぎたため、狩人のほかの曲が埋もれがちになった、とも言われています。

 

春まだ浅い季節へ

かなり主観的に深読みしちゃってますが、読めば読むほどよくできた詞だと思えて来ます。
特に冒頭の四行は、全体を象徴する出だしになっていて、凄みのようなものすら感じます。

行く先が早春という季節なのも意味深です。
空間的には信濃路なのですが、おそらく東京から行くと、季節が少し戻ることになる。
梅がほころび香り始める季節から、梅が膨らみ始める頃へと遡る感じでしょうか。

これを、時間を巻き戻してもう一度あなたとの恋が始まったあの季節に戻りたい、という風に理解するのは、少し無理があるかも知れませんが・・・『あずさ2号』の置き手紙は、そんな連想も湧いてくるような、切ないラブレターであるような気がしてきました。

 

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終わりに

以上、深読みに憶測を重ねながら『あずさ2号』の歌詞の意味を探ってみました。

いちおうまとめますと、この『あずさ2号』という置き手紙は、
一次的には道ならぬ恋の終わりを告げるものなのですが、
その実、彼女の葛藤と愛情が溢れるものになっている。
こんな風に理解すると、しっくり来るような気がしています。

『あずさ2号』をお気に入りの皆さんには、もしかしたらこんな解釈には違和感をもたれたかも知れません。ご不快に感じられたら恐れ入ります。いち個人の、主観的な妄想と受け流していただければと思います。
他方で、こんな見方もあるのか、と面白がってもらえたら、それは書いた甲斐があるというものです。よかったらみなさんご自身の『あずさ2号』についても、コメント欄で教えてください。

最後まで読んでくださった方にはお礼申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。

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コメント

  1. ゆいこ より:

    昭和41年ですと1996年ではなく
    1966年の間違いなので
    30年も違いますよ?

    1. くえり(query) より:

      ゆいこさん こんにちは。
      ご指摘どうもありがとうございます!訂正いたしました。
      お恥ずかしい次第ですが、助かりました。

      お好きな曲ということですよね。失礼な間違い、すみませんでした。

  2. 松下香 より:

    良い物を読ませて頂きました。
    ホロリと涙しながら、こどもの頃意味もわからず聴いていた歌が、解るようになった自分をうれしくも感じます。
    ありがとうございました。

    1. くえり(query) より:

      松下さん、嬉しいコメントを、どうもありがとうございます。

      「解るようになった自分をうれしくも感じる」

      とはよい表現ですね。
      まさに思い当たるところです。

  3. フラワー より:

    凄くわかりやすかったです
    そっかぁ私もただ ただお別れの唄列車に乗り
    故郷の信濃路へ帰ってしまう都会のきらきらした恋に疲れた女性の唄かと思ってました
    なるほど目から鱗でした 人生で一番好きな唄です

    1. くえり(query) より:

      フラワーさん、ご感想をどうもありがとうございます。
      わたしもただ、口ずさみやすい曲として聞いていたのですが、あらためて歌詞を読んでみるといろいろ想像がふくらみ、ひきつけられました。
      やはり名曲にはそれだけのものがありますね。きっとこれからも愛されていくでしょう。

  4. ありがとうちゃん より:

    安住さんが歌詞を終わりまでしっかり聞いてくださいと4/30に言われて、初めてしっかり聞きました!子供の頃は、何気なく歌ってたのに、意味もわからず歌っていたのだな〜と思いました(^^)
    解説ありがとうございましたm(__)mよくわかりました!

    1. くえり(query) より:

      ありがとうちゃん、嬉しいご感想をどうもありがとうございます。
      何かお伝えできたとすれば、書いた甲斐がありました。
      私自身も、この記事を書くまで意味もわからず歌っていたことになります。でも、もし本当にここに書いたような内容だとしたら、大人にならないとわからないですよね (^^;)

  5. あずさ より:

    とても素敵な解釈ですね。とても良い内容だと思いました。

    父が松本出身で、私の本名はひらがなで「あずさ」です。
    今松本から新宿に向かうあずさ4号で一人暮らしをしている東京の家に帰宅中です。

    いつも父親世代の方や友人知人とカラオケに行くと、私の名前をネタによく狩人のあずさ2号を歌ってもらうことが多いのですが、ふと、この歌詞の本当の意味を知りたくなってあずさに乗りながら調べていました。

    じんわりと、心に響きました。
    やはり素敵な歌ですね。

    この解釈を読んでもっとこの歌を好きになりました。ありがとうございました。

    1. くえり(query) より:

      あずささん、こんにちは。
      なんとご本名が同じとは、この歌への思い入れ、思い出も大きなことでしょうね。
      そしてお父さまは、とても素敵なお名前をつけられましたね。
      そのような方からコメントをいただけて、とても嬉しいです。

      本文は個人的な感想に過ぎませんが、わたし自身もこれを書いていてさらに『あずさ2号』が好きになりました。
      お返事が遅れて失礼いたしました。

  6. のぞみ2号 より:

    当時、新宿を出発する[あずさ]は1号も3号もありました
    それがどうして2号なのか?
    都会の隅は○○ホテル、季節は同年代との普通の恋愛、ヒロインのあずささんは大学卒業を間近に控えた22歳
    あずささんがあずさ2号に乗って、あずさ2号と訣別する歌なのでしょうね
    経験したことのある人なら、すぐに解ると思いますよ?

    1. くえり(query) より:

      のぞみ2号さん、コメントをどうもありがとうございます。
      これからも人々に歌い継がれて欲しい名曲ですよね。

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